先ほどの謎の話に戻そう。ここ数年は売れているのに、なぜカタチを「ぽっちゃり→細く」したのだろうか。きっかけは、稲垣さんの“気付き”によるところが大きい。
彼女が米国に旅行したときのことである。街中を歩いていると、ミネラルウオーターを持っている人をよく見かけた。じっくり見ると、多くの人は大きいサイズのモノを手にしている。日本では500ml前後が多いが、米国では700〜800mlほど。そのときは「カラダの大きい人は水分をたくさん取るのかな。だから大きいサイズを持ち歩いているのかも」などと受け止めていたが、帰国後、しばらくして東京の浅草に足を運んだとき、気になることが目に飛び込んできた。
「浅草=外国人観光客が多い」エリアだが、彼ら・彼女らが背負っているリュックのサイドポケットを見ると、何人かがミネラルウオーターを持ち運んでいた。しかも、中には1Lのぽっちゃりタイプが入っていたので、大きさを考えると強引に詰め込んでいることがうかがえた。
外国人は大きいサイズのペットボトルを持ち歩いている。夏の暑さを考えると、国内でも「1Lサイズをゴクゴクと飲みたい人が多いかもしれない」「持ち運びのことを考えれば、細くしたほうがいいのではないか」といった疑問がわいてきたので、コンビニの購買データを分析することに。
先ほど紹介したように、サントリーとして1Lタイプは家庭向けとして販売している。家庭向けということであれば、同じカテゴリーの2Lとよく似た購買行動でなければいけないが、明らかに違っていたのだ。売り上げのピークは朝で、その後は下がって、横ばいが続く。この動きは、個人向けの550mlと同じ。
ということは、ビジネスパーソンは出社する前に購入し、ペットボトルを机の上に置いて、1日かけて飲み切る人が多いのではないか。大学生の場合、授業が始まる前に購入して、学校が終わってもバイト先でそれを飲んでいるのではないか。
であれば、直接飲み(ラッパ飲み)のニーズがあるのかもしれない。ユーザビリティを考えれば、ぽっちゃりよりも細くしたほうが時代にマッチしているはずと考え、サイズを大幅に変更したというわけである。
太く短くから細く長くしたことによって、社会にとっていいこともあった。物流2024年問題で、全国でドライバーが不足しているわけだが、サイズを変えたことで積載効率がアップした。1パレット(荷物をまとめて載せる台のこと)当たりの積載数を見ると、これまでは50ケースだったが、カタチを変えたことで60ケースに。輸送効率が1割ほどアップした計算になる。
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