健康意識の高まり、災害を想定しての備蓄、猛暑――。この3つの理由で、ミネラルウオーター市場が盛り上がっているわけだが、最も売れているブランドをご存じだろうか。「サントリー天然水」(以下:天然水、製造:サントリー食品インターナショナル)である。
2023年の年間販売数量は1億3830万ケース(対前年比7%増)で過去最高に。天然水のラインアップを見ると、2L、1L、550ml、280mlがあるが、1Lタイプの形状が新しくなったことをご存じだろうか(5月28日からリニューアル)。
1Lタイプは家庭向けの中容量サイズとして販売していて、カタチは“ぽっちゃり”だった。持ち運びを重視するのではなく、家の冷蔵庫で冷やすことを考えると、この姿が適していたのだ。サイズを見ると、幅は90ミリ→72ミリ、高さは230ミリ→262ミリに。パッと見て、痩せただけでなく、身長も伸びた印象を受ける。
「ははーん、分かったぞ。『天然水が売れている』そうだが、1Lタイプはイマイチなのでは。だからテコ入れのために、サイズを変えたんでしょ」などと推測されたかもしれないが、違う。1Lタイプは前年比70%増なので、むしろ好調である。であれば人気が高まっているのに、なぜこのタイミングで“細く”したのか、という疑問が残る。
その謎を解く前に、天然水の歴史を簡単に紹介しよう。天然水の前身ともいえる「南アルプスの天然水」は1991年に登場して、当初は2Lのみ扱っていた。1Lタイプが店頭に並び始めたのは、2010年のことである。「持ち運びたいけれど、500mlだとちょっと物足りないよね」「家やオフィスでも気軽に飲みたいよね」といった消費者の声を受けて販売した。
当時、1Lタイプの反響はどうだったのか。震災前のタイミングということを考えると、その後、多くの消費者に「ゴクゴクゴク」と飲まれている……と想像したが、そうでもないようで。ブランドマーケティング本部の稲垣亜梨沙さんによると「爆発的に売れたわけではなく、『本当に売れているの?』『お客さまの反響はどうなっているの?』と感じられるほどの状況でした」と振り返る。
気になったので、コンビニの取り扱いを見ると、ローソンは2010年から扱っているものの、セブン-イレブンは2022年からである(一時期扱っていたものの、その後、撤退)。ファミリーマートについては、細くなってから初めて扱うことになる(※コンビニの特性上、店頭に並べるかどうかは個店の判断)。
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