では、メルコインの次の一手は何なのか。中村氏は、暗号資産を「取引や投資という形じゃなくて、手に取ってもらうことがすごく重要」だと語る。その実現に向け、メルコインは「デジタルアセットのマーケットプレイス」の立ち上げを構想中だ。
具体的には、リアルな品物の所有権をトークン化して取引できるイメージだ。「スニーカーとかトレーディングカードとか、ファンのグッズのすごいレアな商品とかアイテム」(中村氏)などが候補だ。「実際にものを保管しておく場所は別のところにあって、所有権だけが入れ替わっていく」イメージだという。
そもそもメルカリはさまざまなモノのマーケットプレイスであり、そこでさまざまなアイテムにひも付いたトークンも取引できるようになるというのは、自然な流れだともいえる。
さらに「ステーキングという概念から暗号資産が広まる可能性もある」と指摘。マイニングに対して報酬が支払われるビットコインとは違い、イーサリアムは保有者に対して報酬が支払われるPoS(プルーフ・オブ・ステーク)という仕組みに2022年9月に移行した。この仕組みがステーキングで、年率で3〜4%程度、金融商品における利子や配当のように報酬を得ることができる。
イーサリアムには「NFTとか、Web3ゲーム、ステーキングなどの可能性もある」と説明。こうした「ビットコインではできないことが、イーサリアムならできる」点で、ユーザーの選択肢を広げることが重要だと強調した。
メルコインは、暗号資産の裾野拡大とユースケース開発の両輪で、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指す。規制とのバランスを取りつつイノベーションを進めていく点が、日本市場ならではの特徴と捉えており、暗号資産ならではの新しい価値提供に挑戦していく考えだ。中村CEOは「次のフェーズに入ったという感じ」だと意気込みを語った。
インタビュー後の5月31日には、DMMビットコインから480億円相当のビットコインが不正に流出するという事件も発生した。現在のところビットコイン価格への大きな影響は見られないが、2018年1月に起きたコインチェックからの580億円にのぼる不正流出が、業界への信頼を低下させ、その後数年間続く仮想通貨の冬の時代の引き金を引いたのは、記憶に新しい。
合計口座数が1000万を超えた暗号資産は、たびたび繰り返される事件を乗り越えて、新たなステージに進めるか。メルコインをはじめとする各社の取り組みは、暗号資産が真に社会に浸透し、新たな経済圏を築くための試金石となるだろう。
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