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日本の暗号資産市場をけん引 メルコインCEOが語る「次の一手」とは?口座数は1000万突破(1/3 ページ)

» 2024年06月11日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

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 日本の暗号資産市場は大きな節目を迎えた。

 国内の暗号資産口座数が1000万を突破し、「暗号資産はもはやニッチな存在ではなくなった」と、メルカリの金融子会社メルコインの中村奎太CEOは語る。

 この急成長をけん引したのは、他ならぬメルコインだ。同社の口座数は、サービス開始から約1年で220万口座に達した。直近1年の新規口座開設数は、業界全体の6割を占め、日本の暗号資産市場を主導してきたといえるだろう。

中村 奎太なかむらけいた)メルコインCEO。大学在学中にインターン生としてサイバーエージェントでプログラミング教育サービスの立ち上げや、DeNAで動画サービスでの感情分析基盤導入などを行う。その後メルカリの研究機関「R4D」にインターン生として参加。2018年に新卒入社後はブロックチェーンエンジニアとして、R4D内で進められていた「mercariX」プロジェクトに携わる。その後メルペイへ異動し、分散台帳開発やAMLsystemチーム、金融新規事業(Credit Design)にてPMを担当。2021年4月よりメルコインに所属、Product部門のDirector、CPOを経て、2023年4月より現職(筆者撮影)

 中村氏は暗号資産について「金融というだけでなく、金融に関係なく接してもらいたい」と、さらなる市場拡大への意欲を見せる。暗号資産は、もはや一部の投資家だけのものではない。メルコインは、多様なサービスを通じて、暗号資産をより身近な存在へと変えようとしている。

「カオスだけどポジティブ」な日本の暗号資産市場

 1000万口座突破について「1000万という数字は結構重要なマジックナンバーなんじゃないか」と中村氏は評価する。一方で、これはあくまで「通過点」であり、「この国の人たちの何割かが使っているという、インターネット水準にまで引き上げていくのは、すごく重要なチャレンジ」と、さらなる普及を目指す考えだ。

 ビットコイン価格は3月に7万3000ドルを超え、最高値を更新した。日本円でも5月に1170万円を超え過去最高値となっているが、いまひとつ盛り上がりに欠けている。その理由の一つは、現在のビットコイン価格上昇をけん引したのが、米国でのビットコイン現物ETFの承認だからだ。通常の株式と同じように証券会社でビットコインが買えるようになり、管理に対する安心感、株式と同じ税制などから機関投資家も投資しやすくなり、価格も上昇した。

 一方で、日本では業界団体が毎年、暗号資産の不利な税制を改正する要望を出しているものの、対応は見送られている。金融庁幹部は「仮想通貨を使うことで生活が豊かになるようなイメージを抱けず、国民の理解が得られない」と日経電子版の取材に対してコメントした。暗号資産の口座数が1000万を超えたとはいえ、3500万を超える証券口座と比べると普及しているとはいえないということだ。

 米国に比べると停滞感も感じる日本のマーケットだが、中村氏は、日本の暗号資産市場について「今の日本のカオスさはポジティブではないか」と評価する。米国では「仮想通貨は金融商品となってしまった」ため、「仮想通貨ならではのトークンのサービスはやりにくいし、取引所も使いにくい」のが実情だというのだ。

 一方、日本の規制や市場は「金融っぽさも厳格なルールとして残りながら、一方でトークンのIEO(取引所を通じて暗号資産を発行する資金調達方法)なども活発。トークン、Web3の可能性を引き出せる絶妙な立ち位置にある」と分析する。

 この環境は、メルコインにとって追い風だ。中村氏は「(金融の規制を受ける)暗号資産交換業をやりながらでも、チャレンジングなことや新しいサービスも提供でき、検討できる」と語る。「日本が世界において、業界をリードする可能性が結構残されていると思っている」

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