また、COMPUTEXの取材では「PC」についてもよく耳にした。これからは、クラウドをベースにしたセキュリティよりも、「AI PC」と呼ばれる、AIを活用するのに十分なコンピューティング能力をもったPCが主流になっていくという。
トレンドマイクロのブースで話をした同社プロダクトマネジメント部門のバイスプレジデントであるエリック・シュルツ氏は「AIを動かせないPCは近い将来、姿を消す可能性も十分に考えられる。これからは『AI PC』が主流になっていくだろう」と語っている。
そうなると、個別のAI PCにもサイバーセキュリティは組み込まれていくことになる。これまでのように多くの組織がクラウドに依存しつつある環境の中で、AIの時代には「オンプレミス」でAIを利用するという環境に回帰していくかもしれない。
そうなれば、もともと個々のコンピュータへのセキュリティからビジネスを広げてきたトレンドマイクロが、NVIDIAとの協力を皮切りに、オンプレミスのAIのサイバーセキュリティでも目立つ存在になっていくだろう。
一般ユーザーや企業が数年前からあっという間にクラウドサービスを利用するようになったのと同じく、遅かれ早かれ、AI導入は待ったなしで避けられない時代になる。日本に本社を置くトレンドマイクロには、AI時代の便利さの裏にあるリスクに対処して安全性を提供してくれる世界的な存在になってもらいたいものだ。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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