IT転職市場において、「SES(System Engineering Service)企業への入社は避けた方が良い」という声を耳にすることがあります。
IT業界の多重下請け構造による労働環境や「案件ガチャ」、キャリアパスに関する懸念が指摘されるケースが多いようです。しかし、これらは全ての企業に該当するわけではありません。
SES企業では、多様なプロジェクト経験を通じて特定の技術や業界に縛られない柔軟なキャリアパスを描けるなど、メリットは数多くあります。実際にプロジェクトを複数経験する中で、社外に幅広い人脈を形成できたり自身のロールモデルとなるような人を見つけられたりと、将来におけるキャリアの選択肢を広げるきっかけを得る人もいます。
ではなぜ、「SES企業はやめとけ」という声が聞かれるのでしょうか。本記事では、実際に弊社にご相談いただいた内容を一例としてご紹介しながら、SES企業に限らず、企業に求められる姿勢について解説します。
以下は、弊社に転職相談をいただいた実際の事例です。
20代エンジニアのAさんはもともと異業種で働いていましたが、エンジニア職に将来性を感じてプログラミングスクールに通い、SES企業に入社しました。入社前の段階では「開発を経験したい」「できればWeb系の言語を使いたい」と伝えていました。ですが、実際には希望していた開発業務ではなく、テスト業務やインフラ業務ばかりアサインされることに。
アサイン先で任される業務を続けながら、何度か上司に案件変更の相談をしたものの、一向に環境が変わることがなく、やむを得ず弊社に転職相談をしました。
Aさんのようなケースは、なぜ起きてしまうのでしょうか。
SES企業では、営業が獲得した案件にエンジニアをアサインするケースが一般的です。案件はユーザー企業(エンド企業)から直接獲得する場合もあれば、ITベンダーから請け負う場合もあります。四次請け・五次請けと商流が深くなればなるほどテスト工程を含む下流工程の比率が高くなる傾向にあります。
商流の深い案件で上流工程や開発工程に携われず、成長実感を得にくいケースや、希望の案件にアサインされず自身のキャリアビジョンと実際の業務内容との間にギャップを感じるケースもあるようです。
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