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物流2024年問題の解決には、業界再編が不可欠ではないか日本の物流がパンクする前に(1/3 ページ)

» 2024年06月22日 07時30分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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日沖博道氏のプロフィール:

 パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。


 物流2024年問題。働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称である。

 とりわけ他の業態よりも労働時間が長いとされるトラック事業においては、労働時間が制限されることで、(1)1日に運ぶことができる荷物量の減少、(2)トラック事業者の売り上げ・利益の減少、(3)ドライバーの収入の減少とそれによる担い手不足などが懸念されている。

 この(1)は荷主とその背後にいる消費者に影響をもたらし、(2)はトラック事業者に打撃を与え、(3)はその従業者であるトラックドライバーの生活を左右する、という構造になっている。「皆にとって悩ましいが、ドライバーの健康ひいては事故防止の観点からの苦渋の改革」という訳だ。

 対策なしの状態で2024年4月1日を迎えたら約3割の荷物を運べなくなると言われていたが、さすがにトラック運送業界も危機感を強め、この2〜3年ほどは矢継ぎ早に対策に取り組んでいた。

 一人のドライバーで運べる距離が短くなるため、例えば長距離輸送の場合には(1)2人のドライバーで交代しながら運転する、(2)複数のドライバーで同じトラックを乗り換えてリレーする、などの工夫を行っている社が増えている。(3)1回あたりの輸送量をかさ上げすべく、大型トラック2台分の輸送が可能な「ダブル連結トラック」の導入を進めている運送会社も少なくない。

 (2)については、例えば東京〜大阪間での往復便が多い輸送会社の場合、東京から運転してきたドライバーは中間地点の浜松辺りで、大阪から運転してきたドライバーとトラックを交換することで、再び東京方面に帰ることができる。大阪から来たドライバーも大阪方面に帰ることができるという具合だ。

 「これは俺のトラックだ」という愛着心が強いトラック野郎たちに抵抗はあるだろうが、「毎日自宅に帰ることができるなら」と受け入れるドライバーも少なくないはずだ。

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