「日高屋化」する幸楽苑 ラーメン店から町中華へのシフトで復活できるか長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2024年06月26日 15時20分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 幸楽苑のメニューは以前、ラーメンをメインに餃子とチャーハンの3品を軸に構成されていた。直近は上述したような定食が増えたことにより、幸楽苑は従来の一般的な「ラーメン店」から「町中華」としての色が強くなっており、結果的に「日高屋」に近似してきた。

 その一方、コロナ禍で鉄道の利用が減り、駅近辺の店舗が多いことから3割もの売り上げ減に悩まされた日高屋は、打開策として出店エリアを見直し、郊外ロードサイドに進出。郊外店を強化しようとしている。つまり、日高屋は逆に「幸楽苑化」しているといえる。

幸楽苑、レバニラ炒め 素・らーめんセット

メニュー拡充で活気を取り戻しつつある幸楽苑

 幸楽苑HDの2024年3月期決算説明会で、新井田傳会長兼社長は「欧州では事業を100年続けて初めて評価される。幸楽苑も100年企業を目指している。その延長上に私の長男がおり、将来を託したが、4〜5年の短い期間で業績の悪化を招いた。3連続営業赤字の決算で、その責任を取って社長職を辞したいとなり、私の出番となった」と、再登板の経緯を説明。加えて「当時のメニューは原理原則から逸脱しており、このメニューでは売れないと判断し、メニューの作り直しから入った」と、原点回帰のメニュー改革から事業再建を始めた。

幸楽苑、夜メニューの中華ダイニングメニュー

 食材の値上がりがのしかかり、メニューの値上げも急務だった。主力のラーメン価格を490円に据え置きながら、利幅のあるセットメニューを数多く作って、値引きする方針で臨んだ。値上げラッシュの中で「お得感」に評価が集まり、結果として顧客が戻ってきている。ほとんどの店で、ランチのピーク時に行列ができるようになった。ディナー限定のメニューでは客単価が10円強上昇しており、いわゆる「ちょい飲み」も視野に入れた「中華ダイニング」メニューも好評だ。

 その他、ラーメン業界の新たな流行である「釜玉ラーメン」を取り入れたメニューの展開や「煮干しらーめん」「背脂中華そば」、期間限定の「鶏白湯らーめん」「冷麺」を発売するなど、ラーメンのラインアップも豊富になっている。こうした取り組みを踏まえ、新井田傳社長は「黒字決算を積み重ね、業績好調を自慢できる会社に育てたい」と抱負を述べている。

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