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無印良品の「リユース商品」じわり人気 従来店舗とは異なるユーザー体験がカギグッドパッチとUXの話をしようか(1/2 ページ)

» 2024年06月28日 08時30分 公開

連載:グッドパッチとUXの話をしようか

「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。

 「サステナブルな取り組み」としてCSR文脈で語られることの多かった「リユース」が、次なるヒット商品に──。いま、事業としてリユースに取り組む企業が相次ぎ、生活者の間でもリユース品に着目した「リユース消費」が注目を集めています。

 リユースとは、文字通り「使用済み製品やその部品などを繰り返し使用すること」。リユース・リサイクル・リデュースからなる「3R」の1つでもあり、なんと2030年には4兆円規模の市場にもなるといわれています(参照:リユース経済新聞より)。

 この市場に大きく寄与すると考えられているのが、無印良品やユニクロなど“新品”を手掛けてきた企業による取り組みです。無印良品では全国20店舗以上でリユース品を常設販売するなど、本格的に取り組んでいます。

良品計画が提案するリユース消費「ReMUJI(リムジ)」(画像:良品計画プレスリリースより)

 その背景にはもちろん「サステナブル(持続可能な)」や「エシカル(倫理的な)」といった考え方が一般化していることも影響しているでしょう。しかし、このようなソーシャルグッド色の強い取り組みや商品・サービスは、なかなかブームにはなりづらいものでした。

 ではなぜ、いま「リユース消費」が注目されているのか。その理由には、私たちが無理せずにサステナビリティと付き合っていくためのヒントがあるように感じます。

 今回は、無印良品が展開しているリユースプロジェクト「ReMUJI(リムジ)」をはじめとした各社の取り組みを例に、そのユーザー体験の魅力に迫ります。

ReMUJIのリユース品、なぜ人気? 従来店舗では「難しい」体験

 藍色の服がズラリと並べられた店内。セレクトショップのように、商品は一点一点色合いが微妙に異なっていて、お客さんは古着を掘り出すかのように服を選ぶ──。

 ReMUJIの店舗では、このようなユーザー体験が起きています。ReMUJIのリユース品は、お客さんから回収した商品を藍色や黒などに染め直したり、洗い直したりしたもので、それぞれ色合いや形状が異なります。素材にこだわる無印良品とはいえ、従来の無印良品ではなかなか見られなかった類の体験ではないでしょうか。

無印良品のリユース・リサイクル(画像:良品計画公式Webサイトより)

 ReMUJIは2010年にリサイクルから始まったプロジェクトで、Webサイトでも「廃棄物の削減」「資源の循環化」といったキーワードを発信しています。しかし、それよりも目立つのは「服を染めること」の歴史や意味合いであり、「環境にやさしい服だから買ってください」というコミュニケーションはしていません。

 ユニクロも同様に「UNIQLO 古着プロジェクト」としてポップアップショップを開くなどの取り組みを始めていますが、そのポスターにも「ヴィンテージ」「遊べる」「新品じゃ出せない色」といったキーワードを散りばめています。やはりサステナビリティだけを押し出しているわけではないのです。

ユニクロも「UNIQLO 古着プロジェクト」を実施している(画像:ユニクロ公式Webサイトより)

 社会問題や環境問題の前に、まずは自分にとって心地良いことを。そもそも売られている服がかっこいいとか、おしゃれとか、欲しいとか、そんなパーソナルな動機を起点とした体験が今、リユース界隈で起きていることなのです。

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