マーケティング・シンカ論

10年で市場規模が10倍に 「アナログレコード」復活の理由をUX観点から考えるグッドパッチとUXの話をしようか(1/4 ページ)

» 2023年06月09日 08時00分 公開

連載:グッドパッチとUXの話をしようか

「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。

 突然ですが、今「アナログレコード」が流行っている――といわれて、読者の皆さんはピンと来るでしょうか。

 最近は「Spotify」などのストリーミングサービスが一般的になり、音楽を聴くのはもっぱらスマートフォンという方も多いと思いますが、一方で、アナログレコード人気の波は確実に来ています。

アナログレコード人気がじわじわ拡大している(画像:ゲッティイメージズより)

 日本レコード協会の統計によると、日本におけるレコードの生産実績は2013年の26万8000枚から22年には213万3000枚と約8倍に、金額ベースでは4億800万円から43億3600万円に拡大しました。要するにこの10年で市場規模が10倍になったのです。

日本におけるレコードの生産実績は過去22年までの10年間で10倍に拡大している(画像:日本レコード協会「生産実績」より)

 大手CDショップのタワーレコードやHMVは、この数年でレコードの取り扱いを急速に増やし、レコード専門店を始めるほどに。欧米でもレコードの売り上げは伸びており、今やアナログレコードは昭和の懐かしい代物ではなく、令和のヒット商品になりつつあるのです。

 一体なぜ、これほどまでにレコードが人気を博しているのか。無料プランも存在するストリーミングサービスだけでは飽き足らず、わざわざお金を払ってまで人々がレコードを買い求めるのには理由があります。

 今回の記事では、UXデザイナーとして、そしてレコード愛好家として、音楽好きを虜にするレコードの魅力を「ユーザー体験(UX)」の観点から考察していきます。

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