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3期連続「炎上」で絶体絶命だったヤプリ、なぜ解約率1%未満を達成できたのか?アプリ制作プラットフォームを展開(1/3 ページ)

» 2022年06月01日 08時00分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

 「プログラミング不要でアプリが作れる」――そんなうたい文句とともにアプリ業界に舞い降り、市場を席巻したサービスがある。ヤプリ(東京都港区)が提供するアプリ開発プラットフォームサービス「Yappli(ヤプリ、以下ヤプリ)」だ。

 2013年にヤプリが誕生するまでは、アプリ制作=プログラミングスキル必須というのが一般的な認識だったと思う。スキルの有無にかかわらずアプリが作れるようになったのは、多くの企業にとって大きな転換点となっただろう。

 現在、ヤプリ経由で開発されたアプリは728に上る。21年度の解約率は0.68%と、SaaS業界で目標値といわれている3.0%を大きく下回る。契約アプリ数は前年同期と比較して約25%成長を維持し、平均月額利用料も同様に7.7%伸長を記録した。22年度はテレビCMなどのマス向け広告に力を入れ、導入社数の増加を目指す。

飛ぶ鳥を落とす勢いで成長するヤプリ

 飛ぶ鳥を落とす勢いの同社だが、実は3期連続「炎上」という暗黒時代もあったという。深夜残業、休日出勤、クライアントへの度重なる謝罪を乗り越えて、顧客満足度の高いサービスに生まれ変わるまでのストーリーを聞いた。

300のアプリが一斉にダウン

 ヤプリが炎上に見舞われたのは17年のことだった。それまでtoC向けサービスとして展開していたが、toBへの導入が急増した。エンドユーザーが100万人を超える企業に導入されたことでシステムが負荷に耐えられず、ダウンする現象が頻発したのだ。

 「当時のお客さまはアパレルや飲食店がメイン。必然的に人出が増える土日にアプリの利用が集中しました。プッシュ通知やクーポン発行などの機能が一斉に使用されるため、システムが作業負荷に耐えられず、アプリがフリーズする事件が多発しました」(広報 荒川萌氏)

 アプリがサクサク動くことが”当たり前”の現代人からすると、急にアプリが動かなくなるストレスはかなり大きいだろう。アプリをアンインストールする人も出てくるかもしれない。システム基盤の改善が急務だったわけだが、同社が取った作戦は非常にアナログなものだった。

 「土日に配信予約されたプッシュ通知の数を確認し、集中している時間帯を見つけては、複数社に『プッシュ通知の時間を1時間変更できませんか』と直接相談していました。100万人以上が利用するアプリに一気にプッシュ通知を送るとシステムがダウンするので、1万人ずつ送信する運用にしていたと聞いています」(荒川氏)

当時の同社の社内資料。3期連続炎上で思わず「どうすんのここ」(画像:ヤプリ提供)

 エンジニアはシステムダウンが発生したと同時に復旧作業に取り掛かり、営業とカスタマーサポートはクライアントからの問い合わせに対応。週末出社や深夜残業など社内全体が疲弊していたという。しかし、ヤプリの炎上劇はシステムダウンにとどまらない。

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