ヤプリ導入によってECの売り上げを大きく伸ばしたアパレルがある。ゴム引きコートで有名な英国の「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」のセカンドライン「マッキントッシュフィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」を展開する三陽商会だ。
同社はアプリにポイントカードやECなどの機能を持たせていた。そこで、「直近3カ月以内にアプリに来訪し、かつ、SANYO ECで1年間商品を購入をしていない」人を対象にプッシュ通知を配信。アプリ内ECでの購入単価は27%増、購入回数も17%増となった。
アプリ内に溜まっているデータと企業の保有データを掛け合わせることで、休眠顧客や潜在顧客にダイレクトに訴求できた事例だ。
ヤプリを利用する業種はアパレル、小売り、飲食といった生活者との距離が近いところだけではない。製造業や教育機関などにも導入が広がっている。多様な業界業種で受け入れられているヤプリだが、もちろん解約も発生する。
1つはポジティブな理由で、同社は「ご卒業チャーン」と呼ぶ。アパレルなどのECに多いというが、アプリ内売り上げが好調のため、オリジナルアプリの制作に投資するというものだ。ヤプリが提供できる機能は限られている。より自社のサービスに合ったアプリ制作のための解約だという。ネガティブな理由としてはコロナ禍の影響が挙げられる。アパレルブランドの統廃合や営業できない飲食店が、コスト削減のために解約した。
「コロナ禍で一時的な解約は増えたものの、EC展開を強化する企業が増えたこともあり、そこまで大きな影響はありませんでした。むしろ成約が解約を上回る状態でした」と田渕氏は振り返る。
市場動向分析などの事業を手掛ける米国企業Statistaの発表によると、22年3月時点でアップルストアから379万のモバイルアプリがダウンロードできることが分かった。22年第1四半期のモバイルアプリ数は前四半期と比較して5.2%増加している。
現代人にとって、アプリは既に日常生活に欠かせない存在になっていることは疑いようがない。現在、ヤプリが提供するアプリ数は728。その数はまだまだ少ないものの、市場のポテンシャルはかなり大きい。今までアプリの制作元を気にしたことはなかったが、いつの日か「このアプリもヤプリ?」「これも? あれも?」と驚かされる日が来るかもしれない。
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