キャッシュレス化が進む一方で、依然として「現金派」を自認する消費者が35%存在することは注目に値する。インフキュリオンの調査によれば、これらの現金派には興味深い特徴が見られる。
まず、現金派の89%が何らかのキャッシュレス決済サービスを利用していることが分かった。これは、現金派といっても完全な現金依存ではなく、状況に応じて決済手段を使い分けている。特に、都度払いBNPL(後払い決済)の利用率では、現金派がキャッシュレス派を上回るという興味深い結果が出ている。
では、なぜ現金派は現金を好むのか。その理由として最も多いのが、「使えるお金がどのくらいあるかを把握しやすい」というものだ。実際、この項目では現金派の48%が現金を優位とし、キャッシュレス派でさえ31%が現金の利点を認めている。これは、物理的な現金の存在が予算管理に役立つと考えられている。
キャッシュレスは多くの点で現金より優れていると考えられているが、「使えるお金がどのくらいあるのかを把握するとき」だけは、現金のほうが優秀だ。これはキャッシュレス派の人であっても31%がそう回答している(インフキュリオン調査より)また、現金には社会的なコミュニケーション媒体としての役割も残されている。お小遣いや祝い金、習い事の謝礼などでは、現金を渡すこと自体に意味を見出す消費者が多い。これらの場面でキャッシュレス化を望む消費者は3割程度にとどまった。「先生にありがとうございましたと封筒を渡すこと自体がコミュニケーション」だとインフキュリオン コンサルティングの森岡剛氏は指摘する。
興味深いのは、キャッシュレス派でさえ、一部の場面で現金を好む傾向があることだ。給与日前後のATM利用に関する調査では、キャッシュレス派の42%が「別の口座にお金を移動させるため」にATMを利用すると回答している。これは、口座間の資金移動やチャージにおいて、現金が媒介として使われていることを示唆している。
森岡氏は、この点について「買い物シーンをキャッシュレス化するだけではキャッシュレスは完全には進まない。自由にコストが掛からず手軽に口座間の資金移動ができることも重要」と指摘する。キャッシュレス社会の実現には、決済手段の変革だけでなく、資金移動の利便性向上も必要ということだ。
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