「新札」登場で現金派はどうなる? 券売機のコストがもたらす影響35%の行方(3/4 ページ)

» 2024年07月01日 09時14分 公開
[斎藤健二ITmedia]

現金取扱機器の更新遅れがキャッシュレス化を促進

 こうした意味を持つ現金は、新紙幣の発行によりどう変わっていくのだろうか。

 新紙幣発行による最大の影響は、現金取扱機器の更新の遅れにある。ATM、券売機、両替機、現金機、セルフレジなど、現金を扱う全ての機器は新紙幣に対応するための更新が必要だ。しかし、この更新は簡単ではない。この数年で現金機・セルフレジなどが広く普及し「今回の新紙幣発行は、これまでの紙幣変更と異なる社会環境で行われる」(インフキュリオンの森岡氏)からだ。

現金を扱う全ての機器は新紙幣に対応しなければいけない(ゲッティイメージズより)

 日本自動販売システム機械工業会によると、新紙幣発行までにATMの9割以上、駅の券売機や小売店のレジの8〜9割で準備が整う見通しだという。一方で、財務省の発表によると、新紙幣対応の進捗(しんちょく)は飲食店の食券機では5割程度、自動販売機は2〜3割にとどまる見込みだ。

 大手企業や金融機関は、新紙幣発行に先立って対応を進めているが、中小事業者にとっては大きな負担だ。新紙幣に対応した券売機は、1台当たり約100万円のコストがかかるとも言われている。ネット上では、券売機の更新に対し国の各種補助金が活用できるような情報も流れているが、全国商工団体連合会によると、実際にはほとんど国の補助金は活用できず、負担は大きい。

 このように新紙幣への対応が後手に回ることで、皮肉にもキャッシュレス決済への移行が加速する可能性がある。森岡氏は次のように分析する。「現金利用者が新紙幣を受け入れない機器に直面した時、現金の利便性は損なわれ、キャッシュレス決済への転換を促す方向に作用する可能性がある」

経済産業省の調査では、キャッシュレス決済利用者の4割が、キャッシュレス決済が使えない店舗の利用を避ける傾向にあるという。どこでも使える安心感が特徴だった現金だが、新紙幣の導入で使えない店舗も登場し、現金が避けられるきっかけになるかもしれない

 経済産業省の調査では、キャッシュレス決済利用者の4割が、キャッシュレス決済が使えない店舗の利用を避ける傾向にあることが分かっている。この傾向は、新紙幣に対応していない現金取扱機器にも当てはまる可能性が高い。

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