攻める総務

経営危機レベルの「人手不足」時代に、総務がやるべきこと「総務」から会社を変える(2/2 ページ)

» 2024年07月02日 07時00分 公開
[豊田健一ITmedia]
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場をつくり、リスクから守る

 「人の問題は、総務には関係ない」という時代はとうの昔に終わっている。総務にも「人目線」は求められる。総務の本分である働く場づくりにおいては、なおさらだ。

 組織で働く人を役者と捉え、その役者、働く人が輝く舞台をつくることだ。経営者、組織のトップは、舞台監督だ。総務はその指示に適した、経営理念を実現するのにふさわしい舞台をつくり、社員のパフォーマンスの場を整える。

 経営からの指示が変われば、舞台も変わり、結果、社員の働き方も変わる。組織において最も重要な舞台を構築するのが、総務の最も重要な役目だ。

 舞台は常に激しい環境変化にさらされており、多くのリスクが存在する。リスクとは、目的に対する不確実性のことだ。追い風になりうる要素は舞台に取り込み、リスクになりうる要素には防御を固める。周囲の環境に目を配り、情報収集し、判断し、変化に対応していく。フェイク情報が氾濫する中、一次情報源を確保し、正確な事実を把握する能力が求められる。

photo (提供:ゲッティイメージズ)

整える

 舞台をつくり、リスクから守ったら、次に文化・社風を整えていく。近年、パーパスを策定し公開する企業は数多い。会社の存在意義の根幹に共感することで、人が集まり、ビジネスが継続するというサイクルだ。このパーパスやビジョン、ミッションの実現を目指した行動を、所属する社員の誰もが、自然に実践していく。こうした社風を整えていくことが、が3つ目の総務の役割となる。

 企業は、他社との差別化を糧に、ビジネスを継続する。この競争戦略のベースとなるのが、働く場であり、そこに流れる企業らしさだ。この構築が、舞台装置を担当する総務の最も重要な仕事となる。

 それには、「らしさ」の確立が欠かせない。「個人らしく」「部門らしく」そして「企業らしく」活動することだ。企業は採用のフェーズにおいて、最大限の選択肢を提供するべきだというのは、先述した通りだ。「個人らしく」働ける場の提供により人が集まり、定着していく。

 部門ごとに求められる成果に適しており、「部門らしく」働ける場が用意されていれば、それぞれがビジネス上の差別化戦略の源泉である「その企業らしさ」に向かって成果を上げていく。

 人手不足が進む中、総務部門自体もその影響を受ける。足元の業務の効率化やデジタライゼーションはもちろんのこと、総務に求められる最大の問題にフォーカスできるように、業務の取捨選択が重要となる。

 「それをやることの意味はあるのか」「この業務で誰が喜ぶのか」と、仕事の意味と目的をあらためて吟味したい。少数精鋭が求められる総務において、最も重要なことにフォーカスしていくことを考えなければならない。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


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