攻める総務

「会議室を探す時間」を“月250時間”削減 三菱自動車が導入した新システムの中身(1/3 ページ)

» 2024年04月04日 12時30分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 会議室が片手で数えられるほどしかオフィスにない場合、会議室の予約を取ることはさほど難しくない。しかし、その数が多く、規模や設備もまちまちだと、ニーズに合った会議室の予約にも苦労する。

 三菱自動車も、そんな苦労を経験してきた企業の一つだ。開発やデザイン、生産機能を集約した開発拠点である岡崎地区では、数百ある会議室から適切な部屋を予約するのに1回当たり数分がかかっており、無駄が発生していた。しかし、内田洋行が提供するICT基盤「SmartOfficeNavigator」を導入し、月250時間余りと見られる無駄削減を実現した。

 「会議室を探す」時間を、どのようにして削減につなげたのか。そのシステムの仕様とは? 同社の加藤和彦氏(総務・サステナビリティ本部 ファシリティマネジメント部 シニアスタッフと開発マネジメント本部 開発管理部を兼務)と甲能渉氏(総務・サステナビリティ本部 ファシリティマネジメント部)に話を聞いた。

目指したのは「探すという行為を排除する」システム

 三菱自動車は、国内に11の拠点を抱えており、そのうち6カ所が開発拠点だ。中でも愛知・岡崎地区は広大な敷地にデザインセンター、技術センター(EV含む)、車両生産拠点(製作所)があり、同じ“三菱自動車社内”であっても、行き来するのに時間がかかる。

photo 三菱自動車 愛知・岡崎地区の開発本館(画像は同社提供、以下同)

 1人1台のPCを持っていなかった頃は、予約していた会議室を誰かが使っていると「間違えたのかな」「他に空いている会議室はないか」と事務所に戻る必要があり、時間の無駄が生じていたという。

 「IT化が進み、それぞれがPCを持つようになったので、そこまでの無駄はなくなったが、それでもやはり時間のロスは膨大なものだったと思う。

 何人参加するのか、どんな設備が入っているのかというのは、会議室を予約するのに必要な情報で、それに応じて空いている会議室を探して予約する。しかし、今までの予約システムでは、会議室名をクリックして開かないと空いているのかどうかが分からない上に、部屋の規模までしか分からなかった。

 普段仕事している場所の近くであれば、または長年勤めていれば勘で分かりそうなものだが、別の建物や遠い場所、また新人であれば判断しようがなく、会議室の予約を取るだけで5〜10分、何かしらトラブルがあれば20分かかる、というようなことはざらにありました」(加藤氏)

オフィス変革は無駄な時間をなくすことから

 2014年に社員が急増したことから、新しいオフィスビルの建築構想を立てていた三菱自動車岡崎技術センター。「工場は新しいものをどんどん取り入れていて、自分が入社したときとは別物になっているが、オフィスでの仕事はPCが入った程度で、働き方が数十年前から変わっていない」と加藤氏。「せっかく新しいオフィスを作るのなら、新しいものを取り入れて、オフィスを変革したい」と、17年からオフィスを変革するためのシステム導入を検討していたという。

 変革以外にも加藤氏が考えていたことがある。それは「ホワイトカラーの生産性を上げること」だ。

 「工場で働く人であれば、時間内にどれだけの組み立てを行えたか、などで測ることができる。また、技術が向上したということも目に見えて分かるため、生産性を測りやすい。しかし、ホワイトカラーの生産性は“創造性”で測ることが多い。しかし、何かを導入したところで、費用対効果が計算しづらいという側面がある。

 とはいえ“作業的なもの”は付加価値を生まないことは分かっていたので、それに関係した時間を圧縮するシステムを導入すればいいのではないか。そのシステムによって生まれた時間をより生産性、創造性の高い仕事に振り分ければいいのではないか。そういうシステムがあれば導入したいと考えた」(加藤氏)

photo 三菱自動車の加藤和彦氏(総務・サステナビリティ本部 ファシリティマネジメント部 シニアスタッフと開発マネジメント本部 開発管理部を兼務)

 では、具体的にどの作業時間を圧縮すれば良いのだろうか。加藤氏は「探すという行為を排除するシステムを開発したかった」と言う。「人、物、場所、情報などを探すという行為は、完全になくしてもいい無駄。会議室という場所を探すのにかかる時間を圧縮したかった」

 加藤氏がシステムに求めたのは機能だけではなかった。「必要な情報をいつでも、どこでも、誰でも、簡単に入手できる」ことにもこだわった。

 「スマホでもタブレットでもPCでも利用でき、簡単であること。複雑である、面倒があるというようなものでは、誰も使わなくなってしまう。

 企業システムにありがちな格式張ったものではなく、使いたいと思うような、ワクワク感を演出するようなスタイリッシュなデザインのアプリにしたい。コンシューマー向けのプライベートで使うような、親しみのあるデザインのものはないかと探した」(加藤氏)

 既製システムを検討したが、どれも要件に当てはまらない。機能を追加すると莫大な追加費用がかかってしまう。

 そこで数社を比較検討し、最もイメージに使いシステムとしてたどり着いたのが内田洋行の人と場所をつなぐICT基盤「SmartOfficeNavigator」だった。要件をフルに満たすため、細かい部分は内田洋行と協創したという。

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