クラファンは、当初は「寄付型(ドネーションベース)プロジェクト」が主流だった。特に社会貢献や地域活性化といったプロジェクトが多く、出資者はリターンを求めず、プロジェクトの成功を支援すること自体に価値を見いだしていた。他にはスタートアップ企業の資金調達を目的とした「投資型(エクイティベース)」のモデルがあり、多様なプロジェクトが生まれていった。
しかし最近では、筆者の実感値だが「物販型(リワードベース)」のプロジェクトが圧倒的に多くなっているように思える。
この変遷の背景には、米国のKickstarterやIndiegogoの成功事例があると考えられる。これらのプラットフォームは、製品の事前注文や特典を提供することで資金を集めるモデルを確立し、多くのプロジェクトが成功を収めた。特にテクノロジーガジェットやクリエイティブプロジェクトが人気を博し、クラファンが新商品のテストマーケットとして機能するようになったのである。
日本でも、クラファンは物販型が主流となっている。日本国内の代表的なプラットフォームとして、今回はキャンプファイヤー(CAMPFIRE)とマクアケ(Makuake)と取り上げたい。
キャンプファイヤーは2011年に設立され、初期は社会貢献や地域活性化の寄付型プロジェクトが多かった。現在では新商品やサービスの先行販売を目的とした物販型プロジェクトが増加している。
マクアケは2013年、サイバーエージェント内の新規事業として始まった「サイバーエージェント・クラウドファンディング」がルーツだ。設立当初から物販型のクラファンに特化しており、新商品の事前販売や新サービスの提供を中心に、多くのプロジェクトが成功している。2022年9月期には200億円の「応援購入」があったと発表している。
その意味では、急速に物販型へ舵を切ったキャンプファイヤーの動きは、後発のマクアケのモデルに対する「同質化戦略」と見ることもできる。同質化戦略は、業界リーダーが取る定石の1つだ。
2023年9月までに累計約770億円の支援金を集め、約8.1万件のプロジェクトが生まれたことで、業界におけるリーダーとする声も多いキャンプファイヤー。一方で、マクアケにはサイバーエージェントという強力な後ろ盾がある。そう考えると、キャンプファイヤーは果たして本当に業界リーダーなのか? という疑問も出てくる。むしろ、リーダーの座はマクアケに取って代わられているのではないか、と。
そうなると、キャンプファイヤーの次に取るべき戦略は、フィリップ・コトラー先生に言わせるなら「ニッチ戦略」、マイケル・ポーター先生流に言うなら「差別化集中戦略」ということになる。キャンプファイヤーにとってのニッチ市場、もしくは集中市場が「推し活市場」なのだ。次項で詳しく説明する。
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