その1つが、すき家の場合は「使い捨て容器」だったというわけだ。かつて「ワンオペ」の問題もあったので、いくら「安さ」のためとはいえ「人」を削っていくことはできない。そこで苦肉の策として、「人の作業」を削るようになったというわけだ。
今は一部店舗のみだが、これから牛肉価格が上がって、最低賃金も引き上げられていく大きな流れも控える中で、「牛丼並盛430円」なんて異常な低価格をキープするにはさらなる「犠牲」が必要だ。全店舗が使い捨て容器になっていくかもしれない。
このように「安い外食」というのは、現場で働く人やサービスを犠牲にして成り立つ現実がある。そういう搾取の構図を「庶民の味方!」「コスパ最強!」とかありがたがっているうちは、日本の賃金が上がっていくこともない。いつまでもたっても貧しいままだろう。
「これで500円? 高すぎるもう行きません!」と文句を言ったり、1000円もしない牛丼チェーンで「使い捨て容器なんて味気ない、ディストピアかよ」と皮肉を言うことは、全て特大ブーメランになって、われわれの脳天に突き刺さっている。
「もっと安くて、もっと品質の良いものを提供せよ」――。もっともらしいことを言っているようだが、実は「もっと企業は、労働者を法外な低賃金で使い倒せ」と叫んでいることに等しい。
毎年約59万人の人口が消える日本では近い将来、「安さ」と「多さ」にフォーカスしたビジネスモデルは成立しなくなる。かつてセブン‐イレブンの成長を支えたドミナント戦略(同一商圏内に集中して出店する戦略)はその代表だ。
それは牛丼チェーンも同様だ。そのため各社、カレー、うなぎ、定食という感じで客単価を上げるメニューを拡充している。
「安さ」でファンをつくってきたビジネスモデルは、「安さ」から抜け出そうとすると強烈なアンチが生まれるのが常だが、そこにくじけることなく、ぜひ「高齢化社会にフィットした牛丼チェーン」という成功モデルをつくっていただきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング