なぜこんなに日本だけ賃金が低いのかというと、実は日本人の7割が働き、日本のGDPの7割を占めている「サービス業」に対して、異常なほど「安さ」の圧力が強いからだ。ここに筆者は「ディストピア容器」をディスる日本特有の風潮も関係していると思っている。
単刀直入に言わせていただくと、「安い店で大したカネも払わないくせに高品質・高サービスは過剰に求める」というモンスター客が異様に多いのだ。そのため「安くて高品質」を実現するためどうしても、現場の労働者が「低賃金で重労働」を強いられてしまうのである。
そう聞くと、「消費者が品質やサービスを求めるのは当たり前だ」というお叱りが飛んできそうだが、筆者は「それがいかん」と言っているわけではない。そこまで品質やサービスを求めるのなら、客側もそれなりの対価を払わなくてはいけない。そこで「安さ」まで求めるのは、店側に労働者を犠牲にした消耗戦を強いることになる。それが全国津々浦々で日本経済を冷え込ませている、と申し上げたいのだ。
主要先進国は日本と違って着々と賃上げができているのは、消費税をゼロにしたわけでも積極財政をしたわけでもない。社会全体が「値上げは仕方がないこと」で、「じゃあ賃上げもしょうがない」という好循環が生まれているからだ。
東京大学 渡辺努教授の研究室で、米国や英国などにおける先進国の消費者と日本の消費者に対して「スーパーでいつも買う商品が値上がりしているのを見たときどうするか」とアンケートを行ったところ、米国や英国などの消費者は値上がりをしていても、やむなしと受け止め、高くなった商品を買うという答えが多かった。
しかし、日本の消費者は多くが、その店で買うのをやめて、元の価格で売っている別な店を探すと回答した。世界トップレベルで「安さ」に執着しているのだ。だから当然、「安さ」を売りにしている日本の外食チェーンは、世界トップレベルのコストカットを強いられる。
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