攻める総務

“正しい総務”は存在しない──総務のプロが心得るべき「厳選4カ条」(2/2 ページ)

» 2024年07月29日 10時30分 公開
[豊田健一ITmedia]
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理想形を思い描いているか?

 この当事者意識があると、次の「Credo 2.FM is MANAGEMENT 自分の経営概念を持つ」につながる。ご自身の担当業務の理想形を考える、ということだ。

 例えば、車両管理を担当しているとする。最少台数の車両で、事故を起こさずに、かつ効率的に営業活動をするには、どうしたら良いのか? 維持管理コストを最小にするには? あるいは、そもそも車両がなくても成立する営業活動はないだろうか? ……と、担当業務の理想形を常に考える。この思考には、1番目のクレド「当事者意識」が欠かせない。

 理想形が常に頭にあれば、ふと経営者から聞かれた時でも、すらすらと自分の考えを述べられる。当然、経営者からの評価は高まるはずだ。

 経営者は常に「あなたはどうしたいのか」と問いたがる。経営者としても常に「自分はどうしたいのか」「どうすべきなのか」を自問自答しているからだ。上司の意見でもなければ、他社の事例でもなく、自分としてどうしたいか、どうあるべきかを常に思い描くことが重要なのだ。

photo 総務としての理想形を常に思い描いておく(提供:ゲッティイメージズ)

経営者とコミュニケーションしているか?

 理想形は文字通り、あくまで理想であるので、いろいろな方向性で思い描ける。その方向性を決めるためには、経営とのすり合わせが重要だ。

 ここには「Credo 4.Alignment 正しいFMはない」が関係してくる。Alignment(アライメント)という言葉は、タイヤと車体の向きを一致させることを指す。タイヤが右を向いているのに、車体が左を向いていると、上手に前に進めない。タイヤと車両の向きを一致させることで、スムーズな前進ができる。

 このように、経営が考えている方向性と、総務が思い描く方向性を一致させましょう、ということだ。「正しいFMはない」というのは、経営の方向性は各社各様、総務のその各社各様の方向性に合わせるべきであり、万人に共通した正解があるわけではない、という意味である。

 会社を変える戦略総務として大きなインパクトを与えようと思えば思うほど、その施策も規模が大きくなる。となると、当然コストも掛かってくる。稟議書を書き、経営会議でプレゼンする際、経営方針と一致していれば、理解されやすいし、決裁が下りやすい。

 日頃から経営者とコミュニケーションを取り、経営者の方針や思考方法を把握しておくのだ。経営者が車体であれば、総務が車輪。この一致がないと、なかなか前に進まない。もっといえば、その方向性に向かせてもらえない、ということになる。経営者とのコミュニケーションが必要な理由である。

 経営者とのコミュニケーションもさることながら、現場とのコミュニケーションも重要である。それが「Credo 10.MBWA(Management By Walking Around)」、いわゆる「ぶらぶら総務」活動である。現場を歩き回り、現場の雰囲気、課題感をつかんでいく。

 現場を知るとともに、コミュニケーションを通じて、総務についても知ってもらう。むしろ、知ることより、知られることの方が大事かもしれない。総務の考えていることや、これからやろうとしていることを伝え、反応を見る。社内マーケティングの実践である。

 今回は、クレドの中から特に、私が重要だと感じている4つに絞って紹介してみた。残りのクレドは次回、紹介する。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


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