お客が求める「おいしいコーヒー」神話 カフェ経営で見落としがちな“ほろ苦い現実”スピン経済の歩き方(7/7 ページ)

» 2024年08月07日 08時23分 公開
[窪田順生ITmedia]
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無限の可能性が広がるカフェや喫茶店

 つまり、どうしてもフォーマットに落とし込みがちな外食チェーン企業より、自分のやりたいようにできる「個性強めで雰囲気のある店」がつくりやすいので、アドバンテージのある分野なのだ。

 というより、そもそも日本の喫茶文化はそういう「自由」なものだった。明治時代にカフェーができてから、酒を提供する店もあれば、若い女性が接客をする店もあれば、インテリが議論をするための店もあった。昭和になってからも、歌声喫茶、ジャズ喫茶、美人喫茶などクセの強い業態が次々と現れた。

 今のように「おいしいコーヒーが安く飲める店」として、ここまで社会に認知されたのは、1980年代に「ドトールコーヒーショップ」などのコーヒーチェーンができてからだ。つまり、まだ新しいトレンドの1つにすぎないのだ。

「純喫茶ロビンソン桐生店」のロビンソン特製プリン

 そんな日本の喫茶文化を振り返れば、その根底にあるのは「ゆったりくつろげる癒しの場」ということに尽きる。それが時にはジャズや若い女性の接客にフォーカスを当てられ、最近は「おいしいコーヒー」だった、という感じで時代によって変わっただけだ。それは裏を返せば、カフェや喫茶店というビジネスには、まだまだ大きなポテンシャルが秘められているということでもある。

 「脱サラしたらカフェでもやりたいな」という方は、コーヒーへのこだわりも結構だが、まずは客に対して自分はどういう「雰囲気」を提供したいのかということを、じっくりと突き詰めてみてもいいかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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