日本銀行(以下、日銀)の利上げ政策は、史上最大の株価大暴落と大暴騰を同時に引き起こした。
発端は日銀の「口下手さ」に尽きるだろう。中央銀行と市場のコミュニケーションは、実体経済や金融市場を大きく揺るがし得る重要な要素である。本記事では、日銀の政策決定における問題点とその影響を、米連邦準備制度理事会(FRB)と比較しながら検討し、また企業は現在の市場環境にどう対応すべきかを考える。
令和の大暴落は、2024年8月5日に発生した。この暴落の主な要因は、日銀による17年ぶりの本格的な利上げである。この影響で日経平均株価は大幅に下落し、史上最大の下げ幅を記録した。終値は前週末比4451円28銭安の3万1458円42銭となった。この日の下げ幅は、1987年の米国株式相場の大暴落「ブラックマンデー」翌日に記録した3836円48銭を超え、史上最大の下落幅となった。
この度の利上げについて、金融政策決定会合の議事要旨に必要以上に利上げを急進させると解釈できる表現があったことで、市場が大きく動揺。結果として、株価が過剰に反応した。
後日、内田副総裁は火消しに走り「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と発言した。これで市場は大きく持ち直したが、具体的な条件や期間については明確にしなかった。
内田副総裁の発言すら、不用意だったのではないかと批判する向きもある。なぜなら、金融政策の現場において、オイルショックのように金融資本市場が不安定な中でも物価の暴騰を食い止めるために利上げが必要な局面は幾度もあったからだ。
中東・ロシア情勢が不穏な中、原油価格も高い水準で推移しており、令和版オイルショックが起きないとも限らない。そんな時に、自ら金融政策の幅を狭める発言を、株価対策のために発するのは果たして最善だったのか、というわけなのだ。
これを「揚げ足取り」と批判的に捉える人もいるだろうが、中央銀行の要人発言において、揚げ足が出てくること自体が非常にまずい。言い間違えや表現のミスだとしても、中央銀行は政策を正確に言葉で表現できないと見なされれば、何を発言しても市場からは信任されなくなる。
市場の信頼が低下することで、投資家はリスク管理の難しさを感じ、資産運用に対する不安が増す。これにより、長期的な投資戦略が立てづらくなり、結果として市場全体の安定性が損なわれる。信頼の低下は、中央銀行の政策効果を減少させ、経済全体に悪影響を及ぼす。市場との対話は金融政策と同じか、それ以上に重要だと言える。
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