孫正義氏の「人生の汚点」 WeWorkに100億ドル投資の「判断ミス」はなぜ起きたか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2023年08月21日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 世界各地でシェアオフィスを提供するWeWork。2010年2月の創業以来、リーマンショックからの世界的な経済の回復とコワーキングスペース需要の拡大という2つの追い風に乗ってグローバルに事業規模を拡大し、多くの投資家から資金調達している。

 中でもよく知られるのはソフトバンクグループ会長の孫正義氏だ。WeWork創業者のアダム・ニューマン氏にほれ込み、44億ドルの出資をたった12分の社内見学だけで即決してしまったというエピソードは極めて印象的だ。

 孫氏がソフトバンクGを通じてWeWorkに出資した金額は、最終的に100億ドル程度まで膨らんだ。しかし、相次ぐ不祥事と無謀なビジネスモデルによって、同社の経営は風前のともしび状態である。

photo WeWorkは上場廃止の危機にひんしている(提供:ゲッティイメージズ)

 WeWorkの時価総額はソフトバンクGが出資した100億ドルよりも小さくなっており、今や3.24億ドルにまで落ち込んだ。同社の株価は上場から3年足らずで66分の1になり、20円程度で取り引きされ、上場廃止の危機にひんしている。

 同社が上場するニューヨーク証券取引所では、終値ベースで株価が1ドル未満の状態が継続すると日本でいう「継続疑義」状態になり、半年後も1ドルを下回っていると上場廃止になりうる。WeWorkが上場廃止を回避するためには、少なくとも23年中に株価を7倍にしなければならない。

 しかし、孫氏がWeWorkへの投資について「人生の汚点」と諦めムードである以上、そのようなウルトラCに期待することはできなさそうだ。今回はそんなWeWorkの事例を教訓にすべく、歴史を振り返りたい。孫氏はなぜ、判断を誤ったのだろうか。

100億ドルもの“誤判断”が起きた背景

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