こういう厳しい現実を踏まえて問題となるのは、上司が「死ね」という暴言を吐くような問題をどうやって防いでいくのかだろう。
よく言われるのは研修やセミナーによる社員教育の徹底だ。筆者も報道対策アドバイザーとして、ネットやSNSのリスク対策セミナーの講師をよくしているので、これには一定の手応えを感じている。個人の不用意な発言やパワハラで会社全体が危機に追いやられる現実をしっかり学んだ人は、普段の言動もかなり気を付けるようになるのだ。
ただ、一方で「教育」には限界もある。どんなに頭で「これをやってはいけない」「あれをやったら人生詰みだ」と分かっていても、カッと頭に血がのぼってしまうと愚かな行為に走るのが、人間なのだ。
それがよく分かる事例がある。2021年3月、厚生労働省が男性職員をパワハラで処分した。この職員は2017年、政策統括官付社会保障担当参事官室の室長者補佐だったが、その際に部下に対して「死ねっつったら死ぬのか」などの暴言を繰り返した結果、うつ病が発症して退職に追い込んだのである。
「霞ヶ関もブラック化しているってのはよく聞くし、よくあるパワハラ不祥事じゃね」と思うかもしれないが、問題はこの職員が当時、部署内のパワハラ予防や相談を担当する「パワハラ相談員」だったことだ。
ご存じのように、厚労省というのは何がパワハラなのかという基準を示して、民間企業などに情報提供をしている。そこの「パワハラ相談員」ならば知識的なことは全て頭に入っている。どういう精神状態で上司がうっかり暴言を吐いてしまうのか、という傾向も分かっていただろう。
しかし、やってしまう。植木等の「スーダラ節」の歌詞にあるように「わかっちゃいるけどやめられない」のが、暴言パワハラの恐ろしいところなのだ。
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