2000年以降の会計ビッグバンやJ-SOX、IFRS/コンバージェンスなど、会計のグローバル化に対応するために多くの企業が外資系ERPを導入し、会計システムとしてERPを利用してきました。しかし、日本企業の経理の現場ではExcelを多用した手作業への依存度は高く、決算期間中の長時間残業も解消されたとは言えません。
その後、ERPの周辺に残るマニュアルワークをデジタル化するために、RPAやOCR(AI-OCR)を取り入れたツールや、電子化したドキュメントを管理するためのコンテンツ管理サービスなどが導入されましたが、それらを導入している企業の多くが、従来の仕事のやり方を変えることなく、断片的な業務処理の効率化にとどまっており、マニュアルワークを大幅に解消するには至っていません。
今回の記事では、そうしたERP導入後も周辺に残るマニュアルワークの実態と対策について、統計や事例を交えて解説します。
正しい経営判断のために経理組織が作成する財務数値に間違いがあってはいけません。さらに、株主に対しては財務諸表が正しく作成されていることを担保するために、監査要点を満たすことが求められます。
そのため、会計帳簿への取り引きの記録から財務報告までの一連の会計プロセス(Record to Report)の中で、ERPの周辺には下図のように多くのマニュアルワークやスプレッドシート、紙の資料が存在しています。
そして、経理業務の中でマニュアルワークが最も多く、業務量が多いのが、決算業務です。日本CFO協会が2023年に企業の経理組織に関して実施した調査によれば、決算業務の課題は「Excelを多用し手作業が多く非効率」(54%)「ノウハウが個人に蓄積されブラックボックス化」(47%)「業務量が多い」(42%)が上位を占めています。
東証の「45日ルール」が示す通り、決算では限られた期間内に膨大な量の業務をこなす必要があります。個々の業務処理は会計規則や社内規則に基づいた専門性の高い判断を要する上、その多くはExcelを多用したマニュアルワークで行われているため、属人化しやすく、担当者の“職人技”に依存しやすい傾向があります。
さらに、経理などの間接部門での人員削減・採用抑制の影響が属人化に拍車を掛け「誰か一人でも欠けると回らなくなる」状況を招いています。
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