国外で、以前から温めていたアイデアである「暗号化された安全なメッセージングアプリ」の開発を進めながら、ロンドンやシンガポール、サンフランシスコなどで安住の地を探した。サンフランシスコではTwitterの創業者の1人であるジャック・ドーシー氏に会った帰りに街で強盗に遭って、引っ越しを決意したという。
結局、現在の拠点であるドバイにたどり着いた。空港や道路、通信などのインフラが整っていて、税金も安いからだ。
「テレグラムはロシアのアプリ」と思っている人が多いようだが、実はどちらかといえば「反ロシア政府」と言っていいアプリなのである。
テレグラムは、使い勝手の良さと秘匿性から、犯罪者のみならず、世界各地のハッカーやランサムウェア攻撃を行うサイバー犯罪者が情報交換やPRを行う場として使うようになっている。またテロ組織なども情報を効率的に世界に拡散させる場としてテレグラムを使っている。先日、英国各地で移民系らによる騒乱が発生したが、その際も当局の監視の目を逃れるためにデモ参加者らが使っていたのがテレグラムだった。
ドューロフ氏は、世界中で、どんな立場の人であっても自由に安全で中立に使えるアプリを目指してきたと主張する。ビジネス的な判断をする際には、その「芯」がいつも基準になっているようだ。ドバイを拠点にしているのも、インフラなどが優れているだけでなく、政治的に中立な立場で、政府が「反政府派のデータをよこせ」ということはあり得ないからだという。そこにブレはない。
ライバル企業であるメタ(FacebookやInstagram、WhatsAppを運営)やグーグル(YouTubeなどを運営)といった大手は、拠点がある米国政府の意向に沿って検閲に応じている。例えば、動画や投稿に「ワクチン」「テロ」といった言葉が使われると、収益が制限されたり、広告などの投稿を拒否されたりすることが少なくない。法に触れるような密売品などは当然扱うこともできないし、当局からの要請でアカウントやコミュニティーの凍結に応じることもある。
ところがテレグラムでは、創業者のビジョン通り、凍結対象になるものは、よほどのことがない限り基本的に何もない(凍結の一例を挙げると、2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへのテロ事件以降、ハマスが画像や動画を投稿する場になっていた公式チャンネルは、日本や一部の欧米諸国では閲覧制限がかかっている)。
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欧米で警戒されるロシア製ソフト、日本政府が使用していた どんなリスクがあるのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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