2023年に日本で大きな話題になった指示役「ルフィ」の強盗・詐欺事件。フィリピンから来た犯人が強盗や詐欺を指示していたことで注目された。この事件で使われたとして知られるようになったのが、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」だ。いわゆる闇バイトの募集だけでなく、違法な闇取引などでもよく使われているとしてメディアで取り上げられていた。
テレグラムは、日本で人気のLINEのように無料のメッセージングアプリとして使われるだけでなく、ユーザーがチャンネルを作ってグループに情報を拡散できるサービスもあり、世界中で人気を博している。
利用者数も日々増えており、その数は世界で9億人にもなる(LINEは9600万人ほど)。最近、テレグラム創業者兄弟の弟であるパベル・ドューロフ氏が珍しく欧米メディアのインタビューに立て続けに応じている。
インタビューではある意味で「謎の多い」テレグラムについていろいろと語っている。テレグラムの成り立ちは興味深いもので、さらに創業者のビジネス哲学はビジネスパーソンにもきっと役に立つものだと思う。そこで、創業者側の視点からテレグラムをひもといてみたい。
まず簡単にテレグラムの歴史を振り返る。1984年に旧ソ連で生まれたドューロフ氏は、テレグラムの共同設立者である兄とともに幼少時代をイタリアで過ごした。ソ連崩壊後にロシアに帰国した兄弟は、ロシア版Facebookと呼ばれる「フコンタクテ(VK)」というSNSを立ち上げた。すると瞬く間にロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、その他多くの旧ソ連諸国で最も人気のあるSNSとなった。
だが、そこに思いがけない敵が現れる。ロシア政府である。2011年から発生していた反政府デモの参加者のアカウント情報などを政府側から手渡すよう要求された。さらに2013年には、ウクライナにいる反ロシア勢力の情報提供を求められた。
そこで、「ユーザー情報をロシア当局に渡す」か、または「VKの株式を全て売って国を去る」かという選択に迫られる。ドューロフ氏は、VKを捨ててロシアを去った。
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