考えてみれば、工場内管理の甘さも、ガバナンスの不在も、すべては小林製薬の組織風土ゆえの問題であり、その悪しき組織風土を作り上げてきたものが、創業以来100年以上にわたる相互けん制が働かない同族経営に他ならないのではないでしょうか。
その結果としてわれわれが目の当たりにしたものは、あってしかるべき説明・謝罪会見が遅れ、トップ交代発表時には会見を行わず、決算発表時に委員会報告書の概要説明を盛り込んでお茶を濁すという、消極的な情報開示に現れた創業家の「逃げ」の姿勢でした。退任した小林一雅会長を特別顧問として、月額200万円の報酬で「厚遇」するという非常識な対応も看過できません。
不祥事に関して、率先して対策を実行に移す判断や指示を行うことはなかったとされる会長、社長の責任もさることながら、それを修正できなかった、取締役会過半を占める社外取締役4人の責任も大きいとみています。しかし、社外取締役4人は留任が確認されています。報告書の公表に伴う取締役会総括では、2025年3月の定時株主総会で企業統治などの抜本的改革を担う新たな経営体制を諮るとしており、多数の人命が失われた不祥事の重大さに比した対応の遅さにも驚かされます。
「(創業以来)最大の危機にある」(山根社長)として、紅麹事業からの完全撤退を発表した小林製薬ですが、危機回避のポイントはそこではありません。最大の根源である同族経営からの完全脱却となる役員体制の刷新なくして、小林製薬の信頼回復はあり得ません。機能してこなかった社外取締役が今こそ声をあげ、まずは同族関与の一掃をはじめ早急な体制見直しに動くべきであると強く思う次第です。
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
小林製薬の「紅麹」問題 「機能性表示食品」見直しの背景に何があるのか
「紅麹問題」の小林製薬、二度のシステム障害「みずほ銀行」とあまりに多すぎる共通点Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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