自社製紅麹関連の機能性表示食品を摂取した人が多数命を落とし、大きな波紋を呼んでいる小林製薬ですが、外部識者で構成された事実検証委員会の調査報告書がまとまり、決算発表会見で公表されました。そして、事故の発生経緯、当局に対する被害者発生報告や商品回収が遅れた原因が明らかになりました。あらためて同社が抱えるさまざまな問題が浮かび上がっただけでなく、根本的な経営立て直しをせざるを得ない状況になっています。
問題点は、大きく3点あると考えています。1つ目は、小林製薬が企業の基本姿勢を含め、はたして利用者の健康維持にかかわる製品を扱う資質があるのかという問題。2つ目は、監査役および社外取締役を含めた経営における重大なチェック機能が働いていなかったというガバナンスの問題。そして3つ目が、同族経営の弊害、それに対する認識と対処の甘さという問題です。
1つ目の問題から見ていきましょう。多数の死者を出した紅麹関連機能性食品は、製造工程において何らかの理由で混入した青カビ由来の「プベルル酸」が原因であると、有力視されています。厚生労働省は、工場内の青カビが紅麹菌の培養段階で混入し、プベルル酸など想定していない3種類の化合物を作ったと推定しています。
大前提としての問題点は、健康関連食品を扱う工場が青カビ発生を容認するような環境で良いのかという基本的なことです。紅麹の培養を行っていたのは同社の大阪工場で、1940年に操業を開始した80年を超える年季入りの現場です。
同工場は問題発覚前の2023年末、老朽化を理由に閉鎖しました。製造現場がどのような状態であったのか、現在は詳細を知る由がありません。しかし今回の報告書では、後述の通り工場内で青カビの発生も確認されており、常識的には健康関連食品製造にふさわしい環境とはいいがたく、そこで製造を続けてきた同社の姿勢には疑問を感じざるを得ません。
報告書では青カビに関する記述として、関係者から「紅麹を培養するタンクのふたの内側に青カビが付着していたことがあった」との証言があり、この関係者が品質管理担当者に報告したところ「青カビはある程度は混じることがある」と取り合ってもらえなかったとの記載があります。また、問題となった原料ロットの製造期間に、乾燥機が壊れて紅麹菌が乾燥されずに放置されたという事実も報告されています。これらの事実報告から、同社が健康関連食品の製造事業者として必要な品質管理レベルを満たしていたとはとてもいいがたいと思うのです。
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