リテール大革命

24期連続増収のスーパー「トライアル」 安さだけではない、納得の成長理由(1/3 ページ)

» 2024年08月30日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 小売市場の中で飛躍的成長を遂げている代表的企業の1社が、トライアルホールディングスです。トライアルホールディングスのルーツは、1974年に福岡市でオープンしたリサイクルショップあさひ屋。その後、1984年にトライアルカンパニーへと商号を変更しました。

 当初は小売店向けのPOS(販売時点情報管理)システム開発などを主軸に展開していましたが、1992年に福岡県でトライアル1号店を開店以来、全国に300店舗超を展開する規模にまで拡大しました。500ミリリットルの天然水が29円〜、三元豚ロースカツ重が299円〜、レギンスパンツが998円〜など、挙げればキリがないほど驚異的な価格でディスカウンターとしての地位を確立しています。

 そのため、トライアルにはディスカウントストアという印象が強いかもしれません。しかし、トライアルの強みは安さだけではありません。データに裏付けられた、DXのお手本企業でもあるのです。

安売りだけではない、DX先進企業でもあるトライアルホールディングス(出所:同社プレスリリース)

24年連続増収 小型店へのシフトも成功

 その内容に触れる前に、同社の成長について整理したいと思います。

 次の図にある通り、同社は24期連続増収を継続しており、直近の2024年6月期は売上高が7179億円、営業利益は191億円です。14年間で約3倍と、出店攻勢をかけてきた中で既存店売上も2024年7月まで38カ月連続で前年同月比プラスであり、新店と既存店の両面で成果を出していることが分かります。営業利益も2022年対比で159%、営業利益率は同0.6%増と、着実に利益を確保していく経営基盤を実現しています。

24期連続増収など、着実な成長を続けている

 出店では、特に都市部向けの小型店の拡大が顕著です。同社は長年「スーパーセンター」という、約4000平方メートルに6万〜7万点のアイテムを展開する業態で拡大をしてきました。スーパーセンターに加え、最近は都市部の人口集中という商機を捉えるために、約1000平方メートルに7000〜2万アイテムを展開する小型店フォーマットを強化しています。2021〜2024年における新店のうち、70%が小型店であることにもその強化度合いがうかがえます。

 その他、同社の投資で際立つのが、リテールAIのソフトウェア開発費です。2026年に向けて、2024年対比で6倍超である、2.6億円の投資を計画しています。

 では、なぜ同社はこのような成長を遂げられたのでしょうか。4つのポイントに整理したいと思います。

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