リテール大革命

24期連続増収のスーパー「トライアル」 安さだけではない、納得の成長理由(3/3 ページ)

» 2024年08月30日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]
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(3)データ分析基盤「MD-Link」の導入

 店舗運営で蓄積したデータを、メーカーや卸企業と共有することで、双方がマーケティングを高度化していくサイクルを「MD-Link」というデータ分析基盤で実現しています。

 MD-Linkとは、特許取得済みの独自の高速処理エンジンによって、店舗で蓄積したビッグデータなどを分析するシステムです。顧客会員情報と購買データを結び付けることで、どのような組み合わせで商品を購入しているかを明らかにする併売分析や、顧客の住所を使った商圏分析も可能で、特定地域から来店した客の売上分析も行えます。これらのデータをメーカー・卸企業と共有し、現状を明確な数字で把握。次なる打ち手をともに検討する仕組みを展開しています。

 メーカーは小売業に対して、商品を競合よりもとにかく多く陳列してもらうためのアプローチを行うのが通例です。しかし、本来はともに業績を拡大していくパートナーであり、陳列されたら終わりではなく、売れ続けることこそが共通の目的のはずです。

 だからこそ、店舗で得たデータを共有することで次の課題をともに見つけ、さらに良質なデータを取得するにはどうすれば良いかまで、二人三脚で進める施策は重要です。

リアル店舗とデータをうまく組み合わせている(同前)

(4)挑戦の風土とテクノロジーに感度の高い経営陣

 DXという言葉は今では一般用語のようになっていますが、言葉の起源は2004年にスウェーデンの大学教授が発表した概念といわれています。日本では、2018年に経済産業省が発表したレポートによって広がりました。

 一方、トライアルホールディングスでは2007年にデータベースエンジンの自社開発へ着手し、2013年に前述したMD-Linkを立ち上げ、サプライヤーとのデータ連携を開始しました。さらに2015年にスキップカート、2018年には同社によると日本初となるスマートストアを開店しています。

 これだけでも、どれだけ同社が先んじていたかが分かります。なおトライアルグループでは、スマートストアを「IoT機器やAI技術を導入し、データの利活用を基に新しい購買体験を提供したり、効率的な運営を可能にしたりする店舗形態」と定義しています。

 このようなスピード感でDXを推進できたのは、ビジョンにテクノロジーという言葉を入れるほど経営陣が先見の明を持って経営を行い、それを推進する優秀な現場メンバーがいたことが大きな要因ではないでしょうか。

 市場に事例がまだないときに、率先して自社が着手すると失敗することもあったことでしょう。それでも、挑戦するからこそ、早く失敗に気付けて改善ができる。そのような前進を奨励する風土なくして、同社の取り組みは実現しないように思います。

 今回は、飛躍的成長を遂げてきたトライアルホールディングスの強さについて解説しました。少しでも、皆さまのビジネスにお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

【お詫びと訂正:2024年08月30日午前5時の初出で「サイクルショップあさひ屋」と記載いたしましたが、正しくは「リサイクルショップあさひ屋」でした。9月2日午後2時30分、該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】

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