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「南海トラフ臨時情報」への対応を検証せよ 経営層が備えるべきBCP「4つの視点」(2/2 ページ)

» 2024年08月30日 08時00分 公開
[中澤幸介ITmedia]
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検証の方法 アフターアクションレビュー

 まずは、各企業において、今回の臨時情報への対応を振り返る必要がある。検証の方法はさまざまだが、欧米を中心に取り入れられているAfter Action Review(AAR、アフターアクションレビュー)の方法は参考になる。やり方は簡単だ。(1)そもそも自社としては、臨時情報に対して、どのような計画を定めていたのか、(2)実際はどう対応したのか、(3)何が課題になったか、(4)うまくいったポイントは何か、これら4つの視点から、一連の対応を振り返る。その際、従業員への注意喚起、出社体制(在宅勤務など)、出張、など対応項目別に検証してみると整理しやすい(スライド1〜3)。

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 例えば、従業員への注意喚起なら、(1)どのような対応計画を定めていたか(例:臨時情報(調査中)が発表された時点で、全従業員に対して防災レベルを高めるよう呼び掛ける計画だった、など)、(2)実際は、どう対応したのか(例:社内で緊急に対応を協議した上で、翌日、全従業員に対して注意喚起した、など)、(3)課題は何だったか(例:注意喚起のタイミングがあいまいだった。注意喚起の文言が分かりにくいものとなっていた、など)、(4)うまくいったポイントは何か(すぐに役員から承認を得られた、など)。もちろん、そもそも何も考えていなかったなら、そのまま(1)は「何も考えていなかった」と記入をすればよい。

 要は、なぜそのような行動をとったのかを明らかにするとともに、課題があったならそれを改善し、同じ轍を踏まないようにするとともに、評価できる点は今後誰がやっても同じようにできるようにすることで、確実に組織としての対応力を向上させるというのがAARの目指す姿である。

 対象期間やメンバーを明確にすることも重要だ。対象期間は、臨時情報(調査中)が発表されてからを対象にするのか、終了後の対応までも含めるのか。対象メンバーについても、特定の事業部・役職だけにするのか、全従業員にするのか、などを決め、その上で複数回に分けて検証する場合は、検証スケジュールを作成する。今回は連休前で夕方だったが、もし繁忙期だったら、夜間だったら、など条件を変えて考えてみることも大切だ。検証を終えたら、それらを踏まえ臨時情報への対応計画をまとめてみるとよい(スライド4)。

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北海道・三陸沖後発地震注意情報への備えも

 南海トラフ地震臨時情報と似たものに、北海道・三陸沖後発地震注意情報がある。2022年度から、北海道から関東にかけて被害が想定されている巨大地震への対策として運用が始まった。想定される震源域やその周辺でM7クラスの地震が発生した場合に、気象庁はおおむね2時間後をめどに「後発地震注意情報」を発表し、その後の巨大地震が起きる可能性がふだんよりも高まっていると注意を呼びかける。

 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)と同様に、発表から1週間程度は日常の生活を維持しつつ、防災レベルを普段より高めることが求められる。この情報もおそらく数年のうちに発出されることはまず間違いない。日本付近でM7クラスの地震は、毎年1回程度は起きている。それが南海トラフ地震震源域だったり、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域であったりするなら、こうした情報が発表されるということだ。

著者プロフィール:中澤 幸介(なかざわ・こうすけ)

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2007年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。

国内外多数のBCP事例を取材。

内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、平成26〜28年度 地区防災計画アドバイ ザリーボード、国際危機管理学会TIEMS日本支部理事、地区防災計画学会監事、熊本県「熊本地震への対応に係る検証アドバイザー」他。講演多数。

著書に『被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ』『LIFE 命を守る教科書』、共著・監修『防災+手帳』(創日社)がある。

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