日本から「BTS」は生み出せるか? 世界で戦えるエンタメビジネスの育て方(2/4 ページ)

» 2024年09月03日 08時00分 公開

エンタメ×生成AIの可能性

水野: では次に、テック関連のトレンドについておうかがいします。安元さんが注目している技術やサービスはありますか?

安元: 生成AIですね。特に北米では、業種ごとに新しい生成AIモデルが続々と生まれています。最近では生成AIを使えば、テキストを打ち込むだけで一気に3D映像を生成できる技術も出てきています。そういった技術はエンタメ領域では既にコスト削減のツールとして欠かせないものになりつつあります。アウトプットに関する指示が的確であれば、さらに効果を上げられると思います。

水野: 日本はいかがですか?

安元: 当社も出資していますが、伊藤園のテレビCMを手掛けた企業AI model(東京都港区)の取り組みは秀逸でしたね。コマース領域では、彼らが生成したAIモデルを活用したことで、商品購入のコンバージョン率の改善を達成しています。テレビCMで人間をモデルに起用すると、有名無名にかかわらず、どうしてもコストが発生するわけで、制作コストを抑えるという意味でもAI活用するケースはますます増えていくでしょう。

AI modelが伊藤園のリニューアル商品販売のテレビCM向けに生成したAIタレント。日本初の試みとして話題になった(AI modelプレスリリースより)

水野: Mintoをはじめ、エンタメ企業の多くが生成AIの活用を検討しています。とはいえ、なかなか「正解」を見出すことができていません。

安元: そうですね。ただ、今後は、間違いなくAIがエンタメにおけるコンテンツ制作の補完をしていくでしょう。エンタメ企業は、これまで以上に、人間しか生み出せない価値を、どのように生み出していくかが問われていくと思います。

水野: NTTドコモ・ベンチャーズは、海外展開も積極的に行っていますよね。

安元: 当社は現在、東京とシリコンバレーに拠点を構えており、北米エリアへの出資も盛んに行っています。また、ヨーロッパやイスラエルなども含めると、海外の出資比率は47%を占めます。

 エリアによって、生まれるテクノロジーには違いがあります。例えば環境問題に熱心なヨーロッパでは、エネルギー領域のベンチャー企業が「Climate Tech(クライメートテック)」として注目を集めています。

水野: なるほど。どんな事業を行っているのですか?

安元: CO2排出量削減や地球温暖化の影響への対策を、テクノロジーの力を借りて推進しています。やはり国が本格的に規制をかけているので、企業も個人も対応せざるを得ない。そういった背景があるので、産業も盛り上がっていきます。クライメートテック以外には、世界的な潮流として、サイバーセキュリティやヘルスケアの分野が面白いと思いますよ。

水野: 日本のベンチャー企業には、どんな特徴が見られますか?

安元: 私がNTTドコモ・ベンチャーズに戻ったときに感じたのは、ベンチャーエコシステムが成長を遂げてきているということです。特に、創業からEXITを経験した起業家が、シリアルアントレプレナー(連続起業家)として活躍しているのが目立ちます。

水野: ベンチャーエコシステムが進化したのは僕も実感があります。他に、特徴的なことがあれば教えてください。

安元: DAY1(創業日)からグローバルを見据えた事業をしていることですね。少し前のメルカリもそうでしたが、近年はグローバルを目指す野心的なベンチャー企業が増えているように感じます。われわれの戦略と合致すれば、当社からの出資も積極的に検討したいと思っています。

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