日本から「BTS」は生み出せるか? 世界で戦えるエンタメビジネスの育て方(4/4 ページ)

» 2024年09月03日 08時00分 公開
前のページへ 1|2|3|4       

起業家とCVCが歩みを共にするために

水野: 現在、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)は日本国内にどれくらいあるのでしょうか?

安元: 私がベンチャー出資に取り組んだ頃、CVCは6社程度しかありませんでした。今は120社を超えているので、10年間で20倍に増えた計算になります。

水野: CVCが求められているんですね。

安元: 自戒も含めてですが、CVCらしく事業会社とベンチャー企業との協業を通じて大きな事業リターンを獲得するのにはまだまだ課題があります。協業のしやすさのもと、新規事業や未成熟のサービスを持つ事業部とベンチャー企業を提携させて、失敗している例も枚挙にいとまがありません。事業規模の大きい事業部との協業は労力がかかりますが、彼らとベンチャー企業を掛け合わせてシナジーを生み出し、一気に上昇気流に乗せるのが私たちの役割だと考えています。

NTTドコモ・ベンチャーズの安元淳・代表取締役社長(Minto提供)

水野: 現在、NTTドコモ・ベンチャーズが目指しているのはどのようなことですか?

安元: 本当の意味で、NTTグループと一緒に事業を作り、世の中を変えていくベンチャー企業に出資することですね。出資比率についても、通常は2〜3%の出資比率ですが、チャレンジするのであれば、出資比率についてもさらにコミットし、協業による成果を互いに着実に高めながら、共に成長していけたら理想ですよね。

水野: リターンを重視しつつ、事業部とのシナジー効果を図っていくということですね。

安元: 一方で、事業部が見えていない技術に張っていくのもCVCの役割だと思います。中には、NTTグループのビジネスモデルをしのぐ技術やビジネスモデルを持ったベンチャー企業も出てくるかもしれません。そういう方々とも私たちはいろいろなアプローチで連携を図りたいと考えています。

水野: リターンの考え方が、他のCVCとはかなり違いますよね。

安元: いや、考え方自体は、おそらく他のCVCと同じだと思います。ただ戦略的リターンを言語化しようとしたときに「そもそも戦略は何か?」という点で各社違ってくるのでしょう。戦略リターンは、数値で可視化することが難しいものです。私たちも経営幹部と目線合わせをしながら、試行錯誤を重ねています。

水野: 出資比率も高めていくのでしょうか。

安元: これまでのCVCのように紋切り型のやり方で低い出資比率を維持しても、やはり株主としての影響力は限定的です。出資先との協業レベルに応じて出資比率を5〜10%まで持つこともあり得ます。CVCとしては少ないですが、リード投資家としてファイナンスを組成するような投資スタイルも、私が就任後からは取り組み始めています。

水野: そのコミットメントはすごいですね。

安元: 学生起業家も増え、プレシード/シード特化型VCも増加傾向にあります。全体的にベンチャーエコシステムは確実に進化しているので、シリアルアントレプレナーをもっと増やしていきたいですね。そのためには事業会社によるM&Aを増やしていくことが肝要で、短期スパン(3〜5年)でシリアルアントレプレナーを輩出できる仕組みづくりをNTTグループ各社と連携しながら目指していきたいです。NTTグループへのEXIT数もインジケーター(目安)にしながら、分かりやすいロールモデルをどんどん作っていきたいですね。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.