「3人に1人は外国人労働者」 梅の花、福岡の食品工場のマニュアルをAIで自動化 言葉の壁をどう越えたかAIで加速する、育成の効率化

» 2024年10月18日 10時00分 公開
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 労働力不足が深刻化の一途をたどる中、外国人労働者の活躍に期待が高まっている。話題になっているのが、2024年6月に成立した「育成就労制度」(施行は2027年予定)の設置だ。

 従来の技能実習制度は「発展途上国の成長に貢献する」ことが主目的であり、労働力の調整には使えない。一方、育成就労制度は外国人労働者を育成して、労働力確保の手段として利用できる点が特徴となる。しかし新たな課題も出てきた。外国人労働者の「育成環境の見直し」だ。言葉や習慣の壁をどう越えて育成すればいいのか。AIを生かしたマニュアルツールを活用して外国人労働者の育成に挑戦する「梅の花」(福岡県久留米市)を取材した。

photo 梅の花のセントラルキッチン(写真は京都セントラルキッチン、スタディスト提供)

育成就労制度に「危機感」 外国人労働者に選ばれるために

 梅の花は、レストラン経営および食品製造業を展開している。「人に感謝、物に感謝」を理念として掲げ、「食材ロスの削減」「食の安全・安心」といったサステナビリティ経営にも積極的だ。その一つとして「多様な人材の活用」にも長年取り組んでおり、実際に福岡県久留米市、京都府綴喜郡、栃木県佐野市、山口市と4つの食品製造工場(以下、CK:セントラルキッチン)への配属を中心に約10年前から技能実習生を受け入れてきた。久留米CKを例に挙げると、150人いる従業員の3人に1人は主にベトナム国籍の外国人労働者が占める。

 梅の花は、育成就労制度をどう受け止めているのか。久留米CKで生産管理課 課長を務める眞田芳明氏はこう話す。

 「『危機感を持った』というのが率直な感想です。育成就労制度は外国人労働者に就労先の選択権があり、育成方法や就労環境、フォロー体制などの面でより条件の良い職場を求めて移動できます。選ばれる職場を目指して働く環境をアップデートしなければ、人材確保が難しくなる。これは容易に想像できました」

口頭のみの指導で「伝言ゲームのように誤った技術が伝わる」

 梅の花には、自ら希望して留学生(短大、大学)から正社員になった外国人労働者もいる。これは同社が過去より、外国人労働者の育成環境の整備に取り組んできた証であり成果だ。しかしそれでも「その育成は長年の課題だった」と眞田氏は話す。

photo 眞田芳明氏(梅の花 久留米セントラルキッチン 生産管理課 課長)

 「特に難しいのは、製造現場の『専門用語を理解してもらうこと』です。例えば豆腐作りに使用する『にがり』は、日本人であれば聞いたことがあるため説明されれば役割を理解できます。しかし外国人労働者の場合はそうはいきません。言葉の壁がある中で教える側もうまく伝えられず、教えられる側も理解できず、作業が止まることが過去に何度もありました」

 それでも長く技能実習生を受け入れていれば、外国人労働者の中で先輩、後輩の関係が生まれる。外国人労働者同士が教え合うことで作業を理解してもらうことも多くなった。しかし、伝言ゲームのように誤った技術や知識が広がってしまうケースもあり、時には「出荷できない商品が出来上がることもあった」(眞田氏)という。

 「もともと当社の製造部には、技術や知識を口頭で伝え合うという文化がありました。まずはマニュアルを整備して製造現場全体で『口頭による伝承の解消』をすることが、結果として外国人労働者の育成環境の改善につながると考えました」

マニュアル導入、“現場と”推進する難しさ――慣習をどう変えるか

 梅の花は、スタディストのマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を一部のCKに2022年から導入している。Teachme Bizはクラウド上で誰でも簡単に画像や動画を用いたマニュアルを作り、直し、見ることができるサービスだ。

 Teachme Bizの運用は眞田氏の部門が担っており、マニュアル作成にどうリソースを割くかなど試行錯誤を重ねてきた。マニュアル作成には、現場の協力が必須だ。マニュアル作成の担当者は製造現場で働いているわけではないため、作成の過程でさまざまな疑問が湧く。しかしヒアリングをするため現場に足を運んでも、積極的に時間を割いてもらうことは難しい。忙しいことが主な理由だが、「技術伝承はOJTで行うもの」という考えからマニュアルの必要性が十分に理解されにくい空気もあるという。

 属人化した業務をTeachme Bizによってスムーズに引き継げたという事例もあり、マニュアルの重要性を理解している従業員もいる。しかし慣習による認識を変えるのは難しく、マニュアルを用いた外国人労働者の育成環境の刷新は「まだ道半ば」(眞田氏)だ。

動画を撮影するだけでマニュアル作成を「半自動化」

 今後マニュアルを現場に横展開する上で眞田氏が大きな変革点になると期待しているのが「Teachme AI」の登場だ。これはマニュアル作成をAIによりアシストするもので、Teachme Bizの新機能になる。β版を経て2024年6月に正式リリースされた。

 Teachme AIは、動画から半自動でマニュアルを作成したり字幕を付けたりできる「動画系AI」機能と、ドラフト版マニュアルの自動生成や自動校正など文書作成をアシストする「テキスト系AI」機能を持っている。

梅の花における製造工程のマニュアルを、Teachme AIで作成する様子(スタディスト提供)
※画面が見にくい場合は、歯車ボタンから画質を上げるか、全画面表示にしてご覧ください。

 マニュアル作成がネックになっている梅の花のような企業にとって特に有用なのが、動画系AI機能の一つ「動画マニュアル半自動生成」だ。一連の作業工程を動画撮影してTeachme Bizに取り込むと、作業の手順ごとに動画が自動で切り分けられる。このシーン分割機能は特許取得済みだといい、同サービスの大きな特徴だ。

 分割と同時に「自動字幕」機能によって動画内の音声から字幕が生成され、適切なシーンに挿入される。この時点で通常のマニュアル作成にかかる作業の約7割は完了した状態となり、後は自動生成された字幕を微調整するだけでいい。さらにTeachme Bizの自動翻訳機能(オプション)を使えば、説明文を20言語に翻訳できる。

 スタディストの木本俊光氏は「『マニュアル作成に工数をかけられない』という事例を以前から確認しており、課題感を持っていた」と話す。

 「Teachme Bizは『わかりやすいマニュアルを、クラウド上で誰でもかんたんに作成・共有できる』ことを重視して開発したサービスです。複雑な操作を排除して、PCだけでなくモバイルでのマニュアル作成にも対応しています。しかし、AIの力を使えばもっとマニュアル作成の負担を減らせるのではないか、楽に運用できるのではないか。そう考えて開発したのがTeachme AIです」

 動画マニュアルは、作業動画を切り分けず運用するケースも散見される。しかしその場合、マニュアル運用者からすると部分的な修正が難しい。利用者からすると検索が難しく、特定の作業だけを見たい場合に該当シーンを探す手間が発生する。木本氏は「Teachme AIは、運用(作成)者と利用者、双方の負担を減らして、日本人にも外国人にも伝わりやすいマニュアルを短時間で作成できます」と胸を張る。

説明文を自動翻訳&読み上げ 育成にかかる工数を減らし時間短縮

 「作ったマニュアルを現場で読み聞かせるような“張り付き型の育成”に時間を使っている現場は少なくありません。理解できない部分は直接教えてもらえる、という環境は必要です。しかし人の入れ替わりが激しかったり指導者不足だったりする現代においては、『何度も同じことを説明している』『毎回、イチから説明している』といった負担は積極的に減らすべきです」。木本氏はそう語り、2024年4月にリリースした業務習得支援システム「Teachme Player」についても触れる。

photo 木本俊光氏(スタディスト Teachme Biz事業本部 プロダクトマーケティングマネジメント室 室長 AI Business Connector)

 Teachme Playerの最大の特徴は、Teachme Biz(Teachme AI)で作成したマニュアルを活用して人材育成を強化できる点だ。マニュアルの読み上げ・ページ送りを自動化し、多言語の音声で内容を確認できる。さらに、Teachme Bizのトレーニング機能で作ったコースを連携させることで、トレーナーがいなくても新人や外国人労働者の技能習得を効率化できる(Teachme Playerの動画イメージはこちら)。
※マニュアルをコース化し、教育コンテンツとして配信できる機能。

 「Teachme Playerが目指すのは、マニュアルを作りさえすれば新人が自走できる仕組みを用意して、張り付き型の育成にかかる時間や工数、属人的な指導を減らすことです。教える側と教えられる側の効率化を促し、より早い即戦力化を実現します」(木本氏)

AIマニュアル、実証実験で感じた革新性

 梅の花は2024年5月、両サービスを用いた「外国人労働者指導」の実証実験に参加した。スタディスト立ち会いの下、マニュアルをTeachme AIで作成して外国人労働者がTeachme Playerで確認する一連の流れを体験したという。

photo 実証実験に参加する梅の花 久留米CK(スタディスト提供)

 当日、現場で様子を見ていた眞田氏は「動画マニュアルの作成は、字幕を考えて反映するのも一苦労です。しかし実証実験では、いつも3時間はかかる動画マニュアルが十数分で仕上がったので本当に驚きました」と話し、「革新的です」とその有用性を称賛する。複数社の企業に協力を仰ぎ実施したスタディストの検証では、Teachme AIを使うことでTeachme Bizのマニュアル作成にかかる工数を平均93%減らせたという。

 「Teachme AIがあればマニュアル作成スピードが格段に向上するだけでなく、現場への負担も減らせます。作業の様子を動画撮影するだけで済むため、協力も得やすくなると確信しました。字幕だけではなく音声も自動翻訳できるTeachme Playerにも大きな可能性を感じました。実際にTeachme Playerを使った外国人労働者にも大変、好評でしたね」(眞田氏)

 「分からないと言えない、積極的に聞けない」という人もいる。言葉の壁がある外国人労働者は、なおさら気後れしてしまうかもしれない。眞田氏は、Teachme Bizのマニュアルは、慣れない環境で働く外国人労働者の支えになると感じている。

photo 久留米CKで働く、外国人労働者の皆さん

 実証実験は梅の花の他、現在までに25社以上で行われた。木本氏は「各社から好感触が得られた」と笑顔を見せる。

 「さまざまな製造現場で実験しましたが、いずれの現場でも高評価を頂けたことは大変うれしく、大きな安心材料になりました。特にTeachme AIについては、生成AIを活用したいがどう業務に組み込めばいいのか分からない企業にとって『身近なAI』になれると自負しています。ぜひ当社のサービスを、生成AI活用のファーストステップにしていただきたいですね」

 梅の花は2024年8月、Teachme AIとTeachme Playerの本格的な導入を完了したばかりだ。当分はCKでの活用が中心になるが、将来的にはレストラン事業部にも横展開することを視野に入れている。眞田氏は「Teachme AIとTeachme Playerを通して、外国人労働者に『母国語が使える』安心感を持ってもらいたいですね。レストラン事業においても、紙のマニュアルというアナログな方法から脱却したいと考えています。最終的には自社グループ全体で活用することが目標です」と、スタディストに寄せる期待を語った。

 労働力の奪い合いが激しい今、より良い育成体制と生産性が高い効率的な労働環境を整備しなければ活躍人材を逃してしまう。育成就労制度の新設によって、外国人労働者を含めた人材の流動性も今後さらに加速するだろう。Teachme BizとTeachme AI、Teachme Playerは、効率的な技術伝承を実現して人材定着を促す一手になるはずだ。

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提供:株式会社スタディスト
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年11月5日