――生成AIからの「意見」を適切に評価し、判断を下すためには、人間側にもその分野に関する一定の知識や経験が必要ではないのか。
これは多くの人が抱く自然な疑問だと考えられます。そして、その疑問に対する私の回答は「Yes」です。その意味で、生成AIが普及した未来では「AIを使いこなせる人」と「AIに使われる人」の二極化が進むのではないかと思います。
興味深いのは、大学における生成AIの利用について、見解が分かれていることです。もちろん、それぞれの見解は尊重すべきだと思いますが、私自身は「学びの機会という観点から、生成AIの存在は認識しつつも、距離を置くべき」という考えです。
その理由は単純です。AIからの「意見」を評価するための知識、経験は学びによってこそ得られるものだからです。特にレポート課題は、生成AIと親和性が高いため、依存しがちになります。一方で、学びの機会が奪われている可能性についても認識すべきです。いくら失敗しても学びの糧となる学生時代に、生成AIに依存してそつなく課題をこなすことにどこまでの意義があるのでしょうか……というようなことを考えています。
補足すると、AIからの「意見」を評価するために、多様な知識や経験を身に着けておくことこそが有用なのではないかと思います。
評価にも色々な方法があるのです。AIのたどった道筋を同じようにたどって検証する「トレース」という方法が最初に思い浮かびますが、そのためにはAIと同じ専門性が必要となります。
一方で、全く別の角度から、その「意見」を検証する「ベリファイ」というアプローチもあります。文化人類学の観点からとか、経営学的観点からなど、一見無関係な領域の知識がベリファイには役立つこともあります。学びは無駄にならないのです。その意味で、異なる専門性を持つ多くの人がAIが出した意見を検証する体制ができるとよいのかもしれませんね。
次回は、自治体における生成AI活用の具体的な事例を紹介します。併せて、自治体のDX推進計画策定のポイントや評価に関する考え方などについても考えていきましょう。
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