2023年11月にあった那覇市長定例記者会見。沖縄の言葉で「はいさい ぐすーよー。ちゅーうがなびら(こんにちは皆さん。ご機嫌いかがでしょうか)」から始まった会見は、市の業務での生成AI本格導入に向けて「那覇市生成AI活用方針」を策定したというコメントを読み上げていた。「いっぺー にふぇーでーびる(ありがとうございました)」と締めたところで、知念覚市長がこう付け加えた。
「なお、このコメントもですね、生成AIによって下書きを作成し、職員が校正を行って作っております」
沖縄県内ではいち早く生成AI活用を導入した那覇市。同市DX推進室の長嶺伶生さんは「たたき台を手直しするだけで作れるので負担は少なくなっています」とそのメリットを挙げる。
住民の個人情報などデリケートな情報も多く扱う行政の現場。その利用にあたっては慎重に活用方針とガイドラインを作成し、日々の業務活用につなげている。行政が生成AIなどの先端技術を使う意義とは――。那覇市の取り組みから探る。
沖縄県在住のフリーランス記者。音楽・エンタメから政治経済まで幅広く取材。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、沖縄県内各企業のスポンサードで2年間世界一周。その後、琉球新報に4年間在籍。
2018年、北京に語学留学。同年から個人事務所「XY STUDIO」代表。記者業の他にTVディレクターとしても活動。
著書に『沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!』(編集工房東洋企画)がある。
活用方針とガイドラインは2023年11月に策定し、翌12月から全庁的な業務に導入、運用を開始している。
「那覇市生成AI活用方針」では、全ての文書関係業務で利用できるとした上で、主な用途を以下のケースに絞った。
(1)文章のたたき台を作成すること
(2)文章を要約、校正すること
(3)文章を翻訳または平易に書き改めること
(4)着想を得る、またはアイデアを発展させること
(5)関数、VBA等のコードを作成または修正すること
(6)その他、業務の効率化や行政サービスの向上に資するもの
実際のケースでは、冒頭のような市長コメントや会議の議事録などの作成、国・県などから来た通知文の要約などで活用し、最終的には職員が内容の確認を行っているという。
本導入に先立って行われた検証利用では、16部局65人の職員が生成AIの活用を実施した。その結果、84%の職員が「生成AIの活用により業務時間が短縮された」と回答し、25%が「1日あたり平均で1時間以上の業務時間が短縮された」と回答するなど、効果が上がっていた。
DX推進室の宮城桜子さんは「公文書向けのフォーマルな文書作成や、あいさつ文などの心を込めた言葉を紡ぐことがもともと得意な人ばかりではないので、生成AIと一緒に考えることでスキルも上がっていくと思います」と、効率化だけでなく能力向上の面でも期待を寄せる。
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