「生成AIは真新しい視点を提示するというよりは、一般論の話が得意なんですよ」と長嶺さん。「抜けがちな視点のチェックや自分が知らなかった知識の補完」にも活用できるという。
例えば、那覇市はプロ野球・読売ジャイアンツの春季キャンプ地でもあるため、関連イベントの周知なども欠かせない。イベントの集客を高める方法を生成AIに尋ねると「SNSで積極的に配信して、練習の様子やインタビューの動画も発信すると良いですよ」「年齢層が高めの人には新聞やテレビ、ラジオも効果的です」といったアドバイスをくれるため「一般論として抜けがないように気付かせてくれる」(長嶺さん)という。
一方で、これまでにはなかったアイデアを生成AIが示し出してくれることもある。プロ野球選手が地域で野球教室をするとなると、少年野球が対象のものが多く見られる。その中で生成生成AIが提案したのが「野球好きの中年層に向けてやってみてはどうか」というアイデア。
長嶺さんは「野球教室は子どもたち向け、が染みついていた中で、なかなか思いつかなかった発想も出してくれました」と魅力を語る。「視点の広がりや気付きを得ることで、今後の取り組みを検討する際に有効だと感じています」
生成AIを活用する際に課題となったのは、大きく「情報漏えいのリスク」と「情報の正確性」だ。
情報漏えいリスクは、どの生成AIサービスを利用するか吟味を重ねることでクリアした。採用したのはMicrosoftのAzure OpenAI Serviceだ。
よりセキュリティーが確保された行政専用の「総合行政ネットワーク」上でも動作するため、従来通りの強固なセキュリティーを担保した。加えて、利用規約の中に、ユーザーによる入力情報が生成AIの学習データに利用されない、との旨が盛り込まれているため、業務上で入力した文字情報などが他の利用者に触れないようにできた。万が一、個人情報が入力されていた場合はそれらを自動検知し、機械的に制御することができるという。
「情報の正確性」に関わる課題については、運用でカバーした。ガイドラインの中に「生成物の取扱における順守事項」という項目を設置。内容については根拠や裏付けを必ず確認することや、市が説明責任を負うことを踏まえて意思決定することなどが盛り込んでいる。
導入までには約半年を要した。2023年5月に、生成AI活用についての庁内検討チームの立ち上げに市長が言及し、6月に検証部会を設置。8〜9月には検証利用を開始、10月に結果を取りまとめた上で、前述のように11月には活用方針とガイドラインを策定し、12月から運用を開始した。
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