キオクシア、株価3分の1急落は「絶好のタイミング」 過去最高益と8000億円自社株買いで示す自信

» 2026年07月31日 18時45分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 「記録的な増収増益」「全ての利益項目が過去最高」「(純利益の伸び率が)驚異的な数字だ」――半導体メモリ大手のキオクシアホールディングス(キオクシアHD)が7月31日に開催した、2027年3月期第1四半期の決算説明会で、力強い言葉が次々に飛び出した。

 2026年4〜6月の売上収益は1兆7671億円で、前年同期比415.5%増だった。Non-GAAP営業利益(調整後営業利益)は1兆3262億円で、営業利益率は75%。いずれも四半期で過去最高を記録した。2025年度全体のNon-GAAP営業利益は8762億円であったため、わずか3カ月で1年間の営業利益を上回った。

 7〜9月の売上収益は、2兆3900億円を見込む。Non-GAAP営業利益は1兆9000億円、Non-GAAP当期純利益は1兆2800億円になると発表した。

photo 2027年3月期第1四半期の業績(出所:キオクシアHDの決算説明資料)
photo 2027年3月期第2四半期(7〜9月)の業績見通し(出所:キオクシアHDの決算説明資料)

 同社の藤川俊彰氏(執行役員、コーポレートコミュニケーション部長)は「AI需要の拡大を追い風に、データセンターとエンタープライズ向け(のNANDフラッシュメモリ製品)が市場の成長をけん引している。特にエージェンティックAI領域が成長ドライバーになっている」と説明した。

 同社は、2027年はメモリ需要が供給を上回るという見通しで、需要に合わせて生産基盤を強化する。2026〜2028年度にかけて年平均4700億円の設備投資を計画している。

キオクシアHD「株式分割」実施へ 「投資家層の拡大図る」

 キオクシアHDは、6月12日に時価総額が約44兆円に達して国内首位に躍り出た。同月下旬には株価が11万円を超え上場来高値を付けた。その後、半導体バブルへの懸念や米国での特許侵害訴訟を受けて株価は約3分の1にまで急落。2027年3月期第1四半期の決算内容に注目が集まっていた。

 同社は7月31日、投資家への還元策として「株式分割」「自社株買い」を行うと発表した。株式の分割比率は1株につき3株で、2026年9月30日を基準日とする。自社株買いの取得株式総数は3000万株、取得株式総額は8000億円を上限とし、8月3日〜10月30日に株式を取得する予定だ。

 キオクシアHDの河村芳彦氏(副社長執行役員)は、株式分割について「投資家の皆さんが投資しやすい環境を作り、投資家層の拡大を図ることを目的としている」と説明した。

photo キオクシアHDの河村芳彦氏(副社長執行役員)(7月31日決算説明会のキャプチャー)

 同日の決算説明会では、同社の経営陣が「株価の値動きへの見解」「株式分割に関する説明」「AI需要や競合企業の動向」などについて語った。その内容を一問一答形式で紹介する。

株価急落は「絶好のタイミング」 株式市場へのメッセージは

――株主還元について、配当ではなく自社株買いから実施することになった背景を教えてほしい。株式市場に対するどのようなメッセージを込めた意思決定なのか。

河村氏 以前から配当について触れてきた。今でも配当の議論は続けている。キャッシュフローが強いため、2026年度下期に配当できることも想定し検討している。

 自社株買いの話が出たのは、やはり株価が相当下方に下がっている。この状況に対して「資本効率を改善するには非常に良いタイミングである」「ここで株数を調整した方が効率が上がるだろう」と考えた。自社株買いによってEPS(1株当たり純利益)が上がるため、株主への還元になる。株価の状況を受けて、配当と自社株買いの順番が逆になったということだ。

 余剰なキャッシュフローをきちんと還元していくという哲学でやっていることに、何ら変更はない。

――自社株買いによって、余剰のフリーキャッシュフローを出していくということだが、開始タイミングが早まったことで原資に影響はあるのか。

河村氏 キャッシュフローの出方は計画通りだ。自社株買いを先行したのは「この株価の急落にどう対応するか」「EPSを引き上げるには絶好のタイミングである」という検討をしたからだ。8000億円の自社株買いによって、配当など今後の株主還元に影響があるわけではない。

 第2〜4四半期にかけてもキャッシュフローは強いため、問題ない。(設備投資や研究開発投資、人的投資をしっかり行いながら)余剰なキャッシュが出た場合は、約半分をめどに還元していく方針で対応する。

推論AIの拡大でメモリ需要増 「需要拡大の入り口にいる」

――AIの推論時に参照するデータの保管場所としてフラッシュメモリの需要が高まっている。今後の見通しを解説してほしい。

藤川氏 推論AIはまだ立ち上がりの時期だ。推論AIやエージェンティックAIによるフラッシュメモリの需要拡大の入り口にいる状況だと認識している。

 特に、エージェンティックAIは(多くのデータを参照するため)ストレージへの依存度が飛躍的に高まっている。推論用サーバ向けのSSD(Solid State Drive)ニーズが増加しており、(データの入力・出力スピードなどの)性能が高い当社のSSDの需要が日々作り出されている。

photo キオクシアHDの藤川俊彰氏(執行役員、コーポレートコミュニケーション部長)(7月31日決算説明会のキャプチャー)

安価な中国製AIモデルが登場 メモリ需要への影響は?

――中国のオープンソースモデルが登場している。米国のフロンティアモデルの性能と、中国製モデルは性能が拮抗(きっこう)しているという見方もある。米中のモデルの動向で、フラッシュメモリ需要に変化は出るのか。

藤川氏 中国の安価なオープンソースモデルの影響については、業界では「ジェボンズのパラドックス」といわれている(※技術進化によって資源の利用効率が上がっても、資源の消費量が減るどころか増加する現象を指す)。AIの利用コストが下がるということは、より多くのユーザーがAIを使えるようになるということだ。

 AIの参入障壁が下がり、多くのユーザーがAIを使うようになれば、より多くのデータを使用することになる。(中国製モデルについては)このポジティブな見方をしている。

photo キオクシアHDの企業ロゴ(編集部撮影)

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