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【解説】キオクシアなぜ急成長? 半導体メモリって何? AIブームを見通すための基礎知識株主総会での発言にも注目(1/2 ページ)

» 2026年06月24日 15時40分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 「上場後1年半で株価が約70倍に上昇」「時価総額が一時60兆円を突破し、トヨタ自動車を抜いて国内首位に」――いま国内で注目を集めている企業が、キオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)だ。

 半導体メモリを手掛ける同社は、AI需要を追い風に急成長を遂げた。その勢いは衰えず、2026年4〜6月の売上収益は約1兆7500億円を見込む。営業利益率は約74%に上り、わずか3カ月で2025年度の通期実績を上回るという(5月15日の決算説明会より)。

 「2026年度から(利益拡大や成長が長期的に続く)スーパーサイクルに入っていく」――同社の河村芳彦副社長執行役員(財務統括責任者)は、6月2日の投資家向け説明会でこう述べた。

 キオクシアHDが躍進した理由を「AI時代にデータが重要だから」と説明するだけでは、本質を捉え切れていない。そもそも「半導体メモリ」とは何なのか。なぜキオクシアHDの技術が支持されるのか。6月2日の説明会の内容から、基礎情報を解説する。

photo キオクシアHDのロゴ(編集部撮影)

キオクシアなぜ急成長? 半導体メモリって何? 押さえたい基礎知識

 キオクシアHDは、東芝のメモリ事業を祖業とする。世界初の技術「NAND(ナンド)型フラッシュメモリ」を発明し、IT業界を一変させた。しかし、東芝メモリとして分社化され、東芝の経営難を機に売却されてしまう。メモリ不況などを受けて不遇の時期を堪え忍び、ついにAIブームの花形に躍り出た。

 半導体メモリは、データを記録する記録装置で、2種類に分けられる。

  • メインメモリ(主記憶装置):コンピュータが演算用データやプログラムを一時的に置く場所
  • ストレージ(補助記憶装置):データを保管する場所。電源を切ってもデータが消えない「不揮発性」という特性を持つ

 東芝が1987年に開発したNAND型フラッシュメモリは、後者に当たる。それ以前の主要な記憶媒体である磁気テープやHDD(ハードディスクドライブ)よりも「小型」「高速なデータ伝送」「省電力性」「耐衝撃性」といった特徴を持つ。

 1990年代以降、NAND型フラッシュメモリがデジタルカメラの記録媒体として採用されたことをきっかけに、携帯音楽プレーヤーやスマートフォン、車載システムなどさまざまな機器に搭載された。2000年代に入って同技術を用いた「SDカードメモリ」や「SSD」(ソリッドステートドライブ)が開発され、キオクシアHDの技術と製品はデジタル社会を支える存在になった。

AIブームの追い風が、キオクシアに吹いたワケ

 2020年代に入り、生成AIブームが到来する。当初、AI開発企業の関心はメインメモリに集まっており、キオクシアHDは蚊帳の外だった。その証拠に、2024年12月に同社が上場した際、株価が公開価格を下回る厳しい結果となった。

 AIの学習・推論では、大量のデータを高速に処理する必要がある。しかし、従来のメインメモリ(DRAM)のデータ伝送速度ではGPU(画像処理半導体)の計算速度に間に合わなかった。そこでAI開発企業は、複数のDRAMチップを積層した次世代メモリ「HBM」(高帯域幅メモリ)を採用。HBMを製造する米Micron Technologyや韓国Samsung Electronicsの株価が急上昇した。

 転機が訪れるのは、2025年。生成AIブームの主戦場が「学習」から「推論」にシフトした。「AIエージェント」「フィジカルAI」など多様なデータを参照し、自律的に動作するAIが広がりつつある。アウトプットの精度を上げる「RAG」(検索拡張生成)や、過去の推論結果を再利用する「KVキャッシュ」などの技術が登場し、記録すべきデータ量が大幅に増加した。

 このデータを、HBMなどの「GPUメモリ」だけで保持するのは難しい。HBMは「データ容量に限界がある」「製造難易度が高く、供給が不足しがち」「単価が高い」といった課題があり、推論システム拡大のボトルネックになっていた。

 この問題を解決し、推論システムをコスト効率よく拡大させる技術として白羽の矢が立ったのが、SSDだ。SSDを「GPUの拡張メモリ」「RAGデータの格納庫」として扱う動きが広がり、AIインフラやデータセンターの需要がキオクシアHDのSSD製品に向けられた。

 同社の太田裕雄社長執行役員は、6月2日の説明会で「ストレージは、GPUとHBMに並んでAIシステムの性能を決定付ける中核となる構成要素だ」と説明した。

photo AIシステムにおけるSSDの位置付け。従来のストレージサーバなどに加えて、ピンク色の領域でのSSD活用が想定されている(出所:6月2日のInvestor Day説明資料)

AI需要をつかむためのSSDポートフォリオ戦略

 キオクシアHDは、多様なSSDポートフォリオによってAI需要を確実につかんでいる。

 高帯域SSDの「KIOXIA CMシリーズ」は、KVキャッシュに最適化した大容量モデルだ。GPUがSSDに直接アクセスする技術に対応し、GPUの拡張メモリとして活用できるという。

 高性能SSDの「KIOXIA GPシリーズ」は、GPUとの直接接続を前提にしている。AIエージェントによる多段階の推論によって、データへのアクセス頻度が増す中、データ伝送の遅延を低減することでAIの性能向上に寄与。100M IOPS(1秒間に1億回の入出力)以上の性能が求められるAIシステムに対応できるとしている。

 大容量SSDの「KIOXIA LCシリーズ」は、AI開発時の大規模データセットや、推論結果の保存に役立つ。データセンターの限られたスペースでも、記憶容量を大幅に拡張できるため、AIインフラのTCO(総保有コスト)を下げられるという。2025年には245テラバイト(TB)の「KIOXIA LC9」を発表した。

photo KIOXIA CMシリーズ(出所:6月2日のInvestor Day説明資料)
photo KIOXIA GPシリーズ(出所:6月2日のInvestor Day説明資料)
photo KIOXIA LCシリーズ(出所:6月2日のInvestor Day説明資料)
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