FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。
上場からわずか1年半で、時価総額がトヨタ自動車を抜いて一時国内2位となった会社がある。キオクシアホールディングスだ。
同社における2026年4〜6月期の純利益予想は、前年同期比48倍の8690億円。AIデータセンター向けのメモリ特需を取り込んでいる。
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ここで思い出してほしい。この会社の前身は、8年前に債務超過に沈む東芝が手放した「東芝メモリ」である。
東芝の子会社は、なぜか外資企業の傘下に入った途端に化けるケースが相次いでいる。テレビの「REGZA」(レグザ)は中国Hisenseの傘下で国内シェア首位に返り咲き、白物家電の東芝ライフスタイルは中国・美的集団の下でわずか2年で黒字転換した。
かつての親会社を離れた子会社が、そろって復活を遂げる。この皮肉な現象は偶然ではなく、共通する構造がある。
東芝メモリ売却の経緯を簡単に振り返る。2015年に発覚した不正会計と米原発事業の巨額損失で債務超過に陥った東芝は、“虎の子”だった半導体メモリ事業を切り売りするしかなかった。
2018年6月、米Bain Capitalを中心とする日米韓連合に売却された金額は2兆円。当時は「日の丸半導体の魂を外資に売り渡した」などと批判の声もみられた取引である。
その後のキオクシアの道のりは平たんではなかった。同社はコロナ禍の爪痕が色濃く残っていた2020年代半ばに、メモリ市況の苦境で赤字に沈んだ時期もあった。
実際に、2024年12月の東証上場時の時価総額は初日終値ベースで8600億円程度と、買収額を大きく下回る「ディスカウント上場」だった。
ところが2025年からのAIデータセンターの建設ラッシュが状況を一変させる。AIサーバ向けメモリの需要爆発で、2026年3月期の純利益は5544億円と過去最高を更新するに至った。
注目すべきは、東芝メモリをキオクシアとして再生したBain Capitalが、何をしたかである。実は、Bain Capitalは大規模なリストラや工場閉鎖、資産売却といった、いわゆる“ハゲタカ”的な価値向上に取り組んだわけではない。
同社は東芝メモリの買収後、東芝時代には不可能だった意思決定の高速化と投資の集中を進めた。具体的には財務管理体制の強化、オペレーション改善、営業戦略の最適化、SSD事業の展開を経営支援の柱として公式に掲げている。
Bain Capitalは東芝メモリを、メモリ市況のサイクルに合わせて巨額設備投資を即断できる体制に作り替えた。半導体メモリは投資のタイミングを誤れば一気にシェアを失うスピード重視の産業だ。キオクシアは現在、3年間で1.4兆円の設備投資予定を発表している。
Bain Capitalは東芝メモリの魂を安く買い叩いたのではなく、東芝の中では実現できなかった本質的な価値を解放できる仕組みに変革したのである。
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