冒頭でちらっと紹介したが、個人的に気になっているのは「1万円の見学ツアー」である。抽選に当たれば、このツアーでしか立ち寄れない製造エリアやつくり手が作業している様子を見学できる。またテイスティングなども楽しめるので、ウイスキーファンにとってはたまらない企画なのだろう。
しかし、価格は1万円である。工場見学は「無料」の看板を掲げているところが多いのに、なぜ1万円のツアーを実施しているのか。
2つの蒸溜所が実施していたツアーで、価格が最も高いのは5000円だったので、料金は2倍である。ツアーの内容は全く違うので、単純に比較することはできないが、社内からはこんな声があったという。「ちょっと高すぎるのではないか」「ツアーの参加者が減るのではないか」と。こうした不安も吹き飛ばして、満席が続いている。
参加者からは「さすが山崎。どれをとっても非常に満足できた」「つくり手と直接お話ができたことで、つくり手の方の思いが伝わり、より山崎が好きになった」といったコメントがあった。
そして、白州でも9月から「1万円のツアー」(週2回の開催、1回130分で定員10人)を実施する。ツアー前半で歴史を感じられるポットスチル(蒸溜窯)を案内しながら、映像を流す。また、麦芽づくりの伝統製法「フロアモルティング」を案内。大麦を床の上で発芽させて麦芽をつくる技術で、サントリーは1960〜70年代ごろまで実施していた。その後、機械化が進んだことで途絶えていたが、「より高品質な“原酒のつくり込み”に挑戦するため」復活を決めた。
後半では、テイスティングルームで「白州森香るハイボール」や「サントリーシングルモルトウイスキー白州12年」などをふるまう。こうした内容は、ウイスキーファンにとってはたまらないようである。白州でも受け付けを始めたところ、すぐに完売。数カ月先まで満席となるほどの盛況ぶりである。
それにしても、サントリーはなぜ「1万円のツアー」を始めたのか。きっかけは、海外での視察である。担当者はスコットランドなどに足を運び、現地のウイスキー蒸溜所はどのような見学ツアーを実施しているのかなどを見て回った。
「いろいろな学びがありまして、とある蒸溜所では貯蔵庫でテイスティングを実施していました。これは弊社でも取り入れられるのではないかと考え、白州のプレステージツアーでは貯蔵庫でテイスティングの体験ができるようにしました」(正田さん)
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