ここまで紹介したように、インドの決済市場において日立ペイメントサービスがなくてはならない存在に成長していることが分かるだろう。
しかし、その道のりは決して平たんではなく、DXの落とし穴の中でもがくことも少なくなかった。松本氏はこれまでの軌跡を振り返り、DXの落とし穴として、(1)手段の目的化、(2)アナログ vs デジタル、(3)売り切り型ビジネスの呪縛の3つを挙げた。
「手段が目的化し、AIやデータの利活用やソリューションありきの話になっていました。さらに『アナログか、デジタルか』という思考にとらわれることで視野狭窄に陥ってしまい、新しい価値が見えなくなりました。短期的な目先の利益に走るようになってしまうことも挙げられます。デジタルのプロダクトソリューションで今年度の売り上げがいくら上がったのか、全体売り上げの何パーセントがデジタルだったのかなど、経営視点では正しいのかもしれないですが、その観点に意識が向けば向くほど顧客のニーズからどんどん乖離(かいり)して……という悪循環になる。これが、DXの落とし穴だったのではないかと思います」(松本氏)
落とし穴にハマりながらも、目指すべき方向性を見極め、インドのパートナーや加盟店と関係を作り上げてきた。インドでの決済事業の取り組みを通じて、松本氏はDXの本質を「顧客志向、ロングターム志向で顧客のビジネスに貢献し、ユニークな価値の追求を通じて長期的な互恵関係を実現すること」と話す。
「インドでのビジネスの根底には、手段を問わずに顧客の事業成長に貢献する、その中でウィンウィンの関係を築いていくというマインドセットがあるように思います。だからこそ、部分最適ではなく、『われわれに全部任せてみませんか?』と、顧客の事業の全体最適を考えた提案スタイルになる。その点が非常に顧客志向です。もう一つは、自社のユニークな価値を徹底的に磨き、その価値を顧客のビジネスのどの部分で生かせるか、そしてそこを起点にどうビジネス全体を変えていくか、そういう視点を持って推進していると実感させられました」
「そして、ここで挙げた2つの観点を踏まえて、彼らはロングターム志向でビジネスを捉えています。共にウィンウィンの関係を長期的に続けていく、そのためには顧客のビジネスのオペレーション部分に何らかの形で関わる必要があります。ユニークな強みを持って顧客のビジネスを良い方向に一緒に変えていく、それがインドでのビジネスの本質であり、DX実現の重要な視点なのではないかなと感じています」(松本氏)
日立の29歳エース社員が考える「製造業の未来」 タイ赴任で見えた、自身の役割とは
富士通の27歳エース社員、1年目で花形部署に異例のヘッドハント 信条は「3カ月で成果出す」
新卒2年目でMVP 楽天エース社員の「売上、営業とのコネも少なかった」中での奮闘記
7年も鳴かず飛ばずだったハイチュウ、なぜ米国で爆売れしたのか 「もぐもぐタイム」が火付け役Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング