業務効率化は「自部署にはムリ」じゃない! 非IT社員をDX人材にする、KDDI流育成法(1/2 ページ)

» 2024年09月20日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 「この業務をデジタルで効率化したいけど、自分たちでやるには知識が少ないし、時間もない。やはり専門チームに任せるべきだろうか」――そのような課題を抱えている事業部門は多いだろう。

 もちろん、社内にはデジタルを得意とする情報システム部やIT部門などもあるが、全部署が案件を持ち込んでしまうとパンクしてしまう。ベンダーやIT部門などに頼らず、自分たちでシステム開発するため、デジタル人材をどのように育成すれば良いのか?

 ドリーム・アーツが主催したオンラインイベント「デジタルの民主化DAY」におけるKDDIの講演の模様を紹介する。話者はKDDIコーポレート統括本部 コーポレートDX推進部でクラウドツール「SmartDB」を担当する横山拓郎氏、RPAを担当する石原丈嗣氏、BIツールを担当する鳥井太貴氏。

左から KDDI コーポレート統括本部 コーポレートDX推進部 横山拓郎氏、石原丈嗣氏、鳥井太貴氏

自動化したいけど、自分じゃできない そんな社員をどうDX人材に?

 経理や総務部門で働いたことがあれば「単純作業に時間を取られる」と悩んだ経験があるだろう。「自動化できれば良いけれど、普段の仕事をしながらマクロを組む時間がない」「自動化する方法についてのスキルが足りない」など、さまざまな理由から業務効率化を図れない実情があるはずだ。

 しかし日々の業務時間の20%、すなわち週5日間のうち1日は「本業以外の業務をしても良い」というルールが社内にあればどうだろうか。

 KDDIはそうした20%ルールの「社内副業」や人事異動の発令を伴う「兼務」制度を敷いている。社内副業の場合は3カ月から長くても半年ほど別部署の業務に携わる。人事発令を伴う兼務では、社内プロジェクトにコミットするため、携わる期間はまちまちだ。

 社内副業と、事業部門が自ら開発することにどのような関係があるのだろうか。

 「20%の時間は本来の業務以外の業務に充てることができるけど、自席でやっていると、上長の目が気になりますよね」と言うのは鳥井氏だ。「そうなると、自席で時間を作るのは難しい。でも、副業先のフロア、例えば私たちのBIチームや横山さんのSmartDBチームなどに来てもらえれば、環境も整うし、安心してDXに集中してもらえる。しかも、ノウハウを伝えることもできます」

 かつて経理部門に在籍していた石原氏は、当時の業務は「手作業が多かった」と振り返る。デジタルを用いて改善したいと思っていても、本業は忙しく、また独学には限界があり難しいと感じていたという。

 「この副業制度は、送り出す側の部署に“負ける要素”がない。自分たちの部署の業務改善というミッションを、副業するメンバーがわれわれのところに持ち込んで、その方法を学んでスキルアップし、もといた部署に戻る。問題が解決するだけでなく、スキルアップした人材まで手に入るということで、元部署のリーダーからしたら、ありがたい制度なのではないかと思います」(石原氏)

 では、受け入れ側にメリットはあるのだろうか。横山氏は「Win-Winですよ」と自信を持って語る。

 「それぞれが独学で進め、標準化されていない仕様のものが各部署にできあがってしまったら、こちらとしてもサポートしきれない。しかし、こちらに来てもらって、ノウハウだけでなくエッセンスも学んでもらえれば、そこまで大きく外れることはない。持ち帰った知識を使ってDXを自分たちで推進してくれるおかげで、われわれの人数を増やす必要もない。まさにWin-Winです」

 このように、社内副業や兼務、20%ルールなどの制度をうまく活用することで、デジタル人材を増やし、部署内のDX化も進み、情シスなどIT部門とのディスコミュニケーションも生じづらくしている。

「デジタル人材」を定義する

 デジタル人材というワードは近年、多くの企業が人材戦略の中で用いているが、その意味するところは各社で異なる。

 資格があること、実務経験があることなど、さまざまな捉え方があるが、KDDIではどうしているのか。横山氏は「資格ありきでは、スキルリッチ、資格リッチになりがちだ」と前置きしつつ、それでもやはり外部が作った資格という物差しのあったほうがレベルを測りやすいだろうと付け加える。

 「資格を取って終わりではなく、資格があるからこそ触ってみて『これができないか』『あれができないか』と想像できるようになる。資格があるからデジタル人材と認定するのではなく、1つか2つほど課題解決経験を持つ資格取得者をデジタル人材と定義しても良いかもしれない」(横山氏)

外部の物差し 外部の物差しという資格を得つつ、課題解決の経験をもってデジタル人材と定義できるかもしれない
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