フロントラインワーカーの作業力の拡張によって、年齢や性別、身体能力に大きな違いがある中でも、多様な人々が共に働ける環境を実現できる。このようにテクノロジーを活用することで、フロントラインワーカーが現場で使う4つの人間力を拡張できるというわけだ。
「拡張された一つ一つの力を統合して、新たな価値を生み出す。価値の創造に挑む。これができるのは、汎用的で創造的な力を持つ人間だけだと私は考えています。フロントラインワーカーが生き生きと働ける環境を整備することで、現場の安全性品質、生産性、環境への配慮を一段と高められるのです」(小島社長)
データとテクノロジーの力でフロントラインワーカーが輝く現場を実現する。これが日立が目指す現場のイノベーションだという。
「日本企業は長い間、現場を重視してきました。そんな日本企業だからこそ、現場の人手不足というグローバルな社会課題を解決し、再び日本を成長の軌道に乗せられると私は確信しています」(小島社長)
一方で、さまざまな業界で、現場のイノベーションが進んでいくと、2つの社会課題が新たに生じることが予想されるという。その1つ目が、インフラへの負荷の増大だ。テクノロジーをフルに活用するためには、大量の電力と、送配電網の整備が必要になる。半導体やバッテリーなどの製造には、膨大な資源も必要になる。
小島社長が警鐘を鳴らす。
「データセンターやAIによる世界の電力需要は、国際エネルギー機関の調査で『2022年から2026年までの4年間で倍増する』と指摘されています。2050年にカーボンニュートラルを目指す日本でこれを実現するためには、エネルギーインフラの在り方を大きく見直す必要が出てくるでしょう」
2つ目の課題が人材育成だ。現場のイノベーションを実現するためには、フロントラインワーカーが、新たなテクノロジーを効果的に活用するトレーニングが必要だという。
「AIの安全性や信頼性など、さまざまなリスク対処もしていかなければなりません。これらの課題に対処するためには、各企業の個別最適では限界があります。産業界、金融界、行政が一体となった街づくり。さらには、教育・研究機関を巻き込んだ人材育成といった全体最適なエコシステムの構築が必要となるでしょう。このように、社会を前進させるための不断の努力が私たちに求められているのです」(小島社長)
小島社長は、将来の人々が今の時代を振り返った際に「2020年代がターニングポイントとして記憶される」と指摘した。
「この2020年代は、現場・インフラ・産業の在り方が大きく変わった、まさに歴史的なターニングポイントとして、記憶されるでしょう。今後この変化の渦は、あらゆる業界を巻き込んで広がっていきます。日本はこれまで、技術や社会の転換点をテコにして発展を遂げてきました。そんな日本にとって、この大変革はまさにチャンスだと私は考えています」(小島社長)
日立は未来に向けて何をしていくのか。
「日立は、技術の力で新時代の社会インフラを支えていく。顧客との競争を通じて現場のイノベーションを推進し、輝く現場、輝く社会の実現に全力で取り組んでいく方針です。大変革の時代を乗り越えるために、共に何ができるかを考えていきたいと思います」
イノベーションによって、「4つの人間力」をどこまで伸ばせるのか。労働力不足という社会課題解決に、どこまでつなげられるのか。日立の今後に注目だ。
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