近年、注目される機会が増えた「人的資本経営」というキーワード。しかし、まだまだ実践フェーズに到達している企業は多くない。そんな中、先進的な取り組みを実施している企業へのインタビューを通して、人的資本経営の本質に迫る。インタビュアーは人事業務や法制度改正などの研究を行う、Works Human Intelligence総研リサーチ、奈良和正氏。
ソニーといえば、何の会社か? 答えは無数にありそうだ。エレクトロニクスを祖業に持つソニーグループは、創業からの80年余りで事業を多様化させ、日本を代表するグローバル企業の地位を盤石なものにしている。
金融、メディカル、音楽、映画……多様な事業は、多様な人材から生まれてきた。「Special You, Diverse Sony」という人材理念に掲げる通り、多様性を競争力の源泉としてきた企業だ。
2000年代には深刻な経営危機に直面した同社だが、選択と集中、成長投資など、さまざまな変革を経て持続的な成長・高収益を創出する企業へと再生を果たした。事業変革を経て、現在はどのような人材戦略を掲げているのか。
同社の人材理念や人材戦略に関する取り組みを、グループ人事部の岩崎千春氏(組織・人事グループ ゼネラルマネージャー/崎は「たつさき」)と人事部門の山菅裕之氏(技術人事部 統括部長)にインタビュー。インタビュアーは人事業務や法制度改正などの研究を行うWorks Human Intelligence総研リサーチの奈良和正氏が務めた。ソニーグループ変革の裏側と、人的資本経営の真髄に迫る。
奈良: ソニーグループの事業は多岐にわたっていますよね。簡単に概要をご紹介いただけますか。
岩崎: はい。当社には、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンタテインメント・テクノロジー&サービス、イメージング&センシング・ソリューション、金融という6つの事業セグメントがございます。
祖業である、テレビやカメラなどのエンタテインメント・テクノロジー&サービス事業やCMOSイメージセンサーを中核とするイメージング&センシング ・ソリューションなどのテクノロジーを強みとしてきました。
祖業のエレクトロニクス事業は、20年前は7割近く構成していました。現在はゲームが3割を超え、事業ポートフォリオも多岐に変化しています。
奈良: 時代の変化に合わせて事業も多様化し、また社員数も増やしてこられましたね。
岩崎: 現在は約11万人がグループに在籍しています。そのうち日本では約半数が、残りの半数は北米や欧米、アジアなどさまざまな地域で活躍しています。
先ほどの通り、当社には6つの事業セグメントがあり、在籍している社員もグローバルに活躍しているため、人材においては多様性や社員一人一人の成長を非常に重視しています。
そのため、社員一人一人の活躍がグループ全体の成長につながると信じて、社員の成長と企業の成長の両立を礎に人事施策の企画・実行や人材ポリシーの構築に日々取り組んでいます。
奈良: 事業や経営の状況によって、どのように両立を図っていけばいいのかも変わってくるかと思いますので、後ほど具体的な施策と共にポイントについても伺っていきます。
状況の変化と言えば、2021年4月の経営機構改革により「ソニーグループ」が誕生しましたが、「人材」における考え方や施策に変化はございましたか?
岩崎: はい、一番大きなところで、人材理念の再定義を行いました。
異なる個性を持った一人一人が多様な個を受け入れるソニーと、パーパスを中心に共に成長するという考えを込めて、「Special You, Diverse Sony」というグループ共通の人材理念を新たに定めました。
多様な事業における多様な人材の生み出す価値を最大化し、ソニーグループのさらなる進化を実現できればと考えております。
奈良: グループ共通の人材理念を設けられたのですね。人事戦略の面での変化についてはいかがでしょうか。
岩崎: 人材理念の再定義に基づいて、グループ共通の人事戦略のフレームワークも設けており、多様な「個」を軸に「個を求む」「個を伸ばす」「個を活かす」と定義しています。
人事施策の策定については、グループ共通で進めるものに関しては基本的にソニーグループで行いつつ、それ以外の施策に関しては、各事業の人事責任者がリードし、事業の特性だったり、人材の個性、特性に応じてそれぞれのインダストリの中で競争力を高めていくような施策を展開しています。
このように、人事施策の対象や範囲によって主導部門を決めていますので、各事業の人事が連携できるよう、4半期に1回程度、グループで何ができるかを議論する場を設けるようにしています。
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