実写化で「炎上しない」条件 呪術廻戦のマーケ事例から考える(3/3 ページ)

» 2024年09月29日 08時00分 公開
[金森努ITmedia]
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「ファンタ学園」CMの成功から学ぶ

 実写化のキャスティングと再現度の重要性を示す成功事例として、呪術廻戦27巻の発売に合わせて行った「ファンタ学園」のオマージュCMは良い教材だ。

 このCMでは、作中のキャラクター高羽史彦を演じた牧野裕夢氏と羂索役の村田凪氏が、漫画からそのまま出てきたような高い再現度で注目を集めた。その反響は役者にもおよび、村田氏はこのCMをきっかけにSNSフォロワー数が10倍に増加した。

牧野裕夢氏が演じ、実写化された高羽史彦(呪術廻戦公式Xアカウントから引用)

 この事例は、キャラクターの再現度の高さがSNS上でのバイラル効果を生むことを示している。単に有名俳優を起用するだけではなく、キャラクターをどれだけ忠実に再現できるかが、ファンの期待に応え、爆発的な拡散力の源泉になる。

「炎上を避けるための条件」とは?

 実写化プロジェクトにおいて“炎上”しないためには、ファンの期待を裏切らないよう再現度を高めることが重要だ。そのためには、作り手がキャラクターや作品に対する深い理解と愛情を持つことが欠かせない。

 キャスティングにおいては、俳優の知名度よりも再現度を最優先すべきだ。俳優が無名であったとしても、「ハマり役」であればファンは喜びをもって受け入れ、大きなプロモーションの成果につながるだろう。

 ファンに対する透明性のある対応や、コスプレ文化の活用も、実写化成功に向けて有効な手段である。つまり、ファンに寄り添い、作品の魅力を最大限に引き出す姿勢が、実写化プロジェクトの成功と炎上回避の鍵となるのだ。「ビジネス上の都合」は、すぐに見抜かれてしまうだろう。

金森努(かなもり・つとむ)

有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師

金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。

2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。

コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、EC等、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)等。


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