この記事は、パーソル総合研究所が9月3日に掲載した「早期リタイアを希望する20〜30代の若手男性が増えているのはなぜか」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などはすべて掲載当時のものです。
近年の社会の急速な変化に伴い、20〜30代の若手就業者の意識が変化している。 パーソル総合研究所が実施する「働く10,000人の就業・成長定点調査」 では、2017年から毎年、全国の就業者に「人生で何歳まで働きたいと思いますか」と、リタイア希望年齢を聴取している。
20〜30代の若手男性就業者において、この質問への回答結果が年々若返る傾向があることが明らかになった。つまり、「早期リタイア」(アーリーリタイア)したいと考える若手男性が増えている。本コラムでは、このような若手就業者の「早期リタイア」への意識変化に着目し、その実態と要因を見ていきたい。
図表1を見ると、20代男性就業者において、リタイア希望年齢を一般的な定年よりもかなり早い「50歳以下」とした割合は、2017年には13.7%であったのに対し、2024年には29.1%と2倍以上に増加した。30代の男性の就業者では「55歳以下」が2017年の14.3%から、2024年には28.1%と、同様に大きく増加している。
一方、20〜30代の女性就業者については、ほとんど変化がない。若手の女性と男性を比較すると、男女差が年々縮まり、2024年にはリタイア希望年齢に男女差がほぼなくなったといえる。従来、20〜30代の女性就業者では、結婚・出産などを想定して早期リタイアを希望する人が男性よりも多かったが、その差が縮まったとみることができる。
図表1:若手就業者のリタイア希望年齢の変化 聴取方法:「あなたは人生で何歳まで働きたいと思いますか。希望する年齢をお知らせください」という質問に対し、「15歳〜100歳(1歳刻みで提示)/生涯働ける歳まで働きたい/まだ考えていない/分からない」で回答を求めた。「まだ考えていない/分からない」は除外して集計。平均年齢は、生涯現役を101歳として、15歳〜101歳までの回答の平均値 出典:パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」より筆者作成また、図示はしないが、40代以上の就業者では、40代男性のみで若干早期リタイア希望者が増加傾向にあるものの、いずれもほとんど横ばいである。つまり、20〜30代の男性就業者において特異的に、早期リタイアしたいと考える人が増えている。
この傾向が特定の社会属性にのみ起きているのか、全体的な傾向なのかを、企業規模、学歴、婚姻・子どもの状況、個人年収別に分析し確認した。すると、大企業でも中小企業でも、大卒でも高卒でも、独身でも子あり者でも、高年収でも低年収でも、若手男性の早期リタイア希望者が増加していた。全国の若手男性就業者一般に起きている意識変化のようだ。
では、このような早期リタイア希望は、いわゆる「Z世代」のように、若い世代に特徴的な価値観の表れなのだろうか。20代男性就業者には学生アルバイトも含まれるため、学生アルバイトと社会人を分けて分析した。すると、学生アルバイトの平均リタイア希望年齢は2024年時点で66歳と高齢であり、経年変化もみられない(図表2)。一方、社会人では57歳と、学生と比べて約10歳若返る。
このことから、若手男性が学生の時から早期リタイアを希望しているわけではなく、学生から社会人になりさまざまな経験をした後、何らかの意識変化が起こり、早期リタイアを希望するようになることがうかがえる。若い世代が固定的に持っている価値観というよりは、社会人になった後の意識変化である。そして、そのような意識変化をする若手男性が年々増えている。
なぜ近年、若手男性就業者の早期リタイア希望者が増加しているのだろうか。その理由を探るため、早期リタイア希望者(20代では50歳以下、30代では55歳以下のリタイア希望者)の、その年齢でリタイアしたい理由を確認した。
図表3を見ると、理由としては「働くことが好きではないから」が約3割と突出して多い。そして「家族や友人との時間や趣味などプライベートな生活を充実させたいから」「趣味などに充てる資金を得たいから」が続く。単純に働きたくない、あるいはプライベートや趣味を充実させたいというのが、主な理由のようだ。一方、「リタイア後の生活のための蓄えが十分あるから」という回答も15%程度と比較的多かった。収入や貯蓄を考慮して答えている人も一定数いることが分かる。
図表3:20〜30代男性が早期リタイアしたい理由(2024年) 聴取方法:「人生で何歳まで働きたいと思いますか」という設問への答えについて、そのように答えた理由を聴取。早期リタイア希望ではない回答者にも同じ選択肢で聴取しているため、早期リタイアの理由としてそぐわない選択肢も含まれる。 出典:パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」より筆者作成さらに、早期リタイア希望の理由にも経年変化がみられた。2020年から4年間の変化を見ると、主な理由である「働くことが好きではないから」「家族や友人との時間や趣味などプライベートな生活を充実させたいから」は、20代男性、30代男性ともに10ポイント程度減少した。つまり、2020年には早期リタイア希望者の4割が、「働くことは好きではないから」と答えていたが2024年には3割に減少したということになる。一方、「リタイア後の生活のための蓄えが十分あるから」は5ポイント程度増加した。
早期リタイア希望の理由として、従来多かった「仕事に対する消極的な姿勢」が減っており「収入・貯蓄を考慮した計画的な姿勢」が増えているのも大きな変化だと考えられる。
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