サイゼリヤの進化か、改悪か? メニュー削減と2000店舗拡大の裏にある戦略スピン経済の歩き方(6/7 ページ)

» 2024年10月09日 05時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「物価高でも値上げをしない」は美談ではない

 現在、訪日外国人観光客がたくさん押し寄せて大人気となっている某外食チェーンの社長にインタビューをして、これから店を増やすかと質問をしたら「もう増やさない」と言っていて、現に今もそうしている。

 外食が店を増やそうとすると、そのタイミングで必ず「効率化」を進めなくてはいけない。マクドナルドのように高度にシステム化されたチェーンは効率化と相性が良いが、食事の種類やスタイルによっては、効率化を進めた途端に魅力が失われて、ファンの求心力も低下してしまうことがあるという。某外食チェーンの社長は「自分の店はそっちなので、拡大路線には走らない」と断言していた。

サイゼリヤのグランドメニュー

 個人的にはサイゼリヤもそっちではないかと思っている。安くておいしいものが食べられるという食のエンタメを体験できるこの店で、メニューを減らすとか店を小さくするのは、あまりいい結果を招かないような予感がするのだ。

 「物価高でも企業努力で値上げをしない」と聞くと、われわれは脊髄反射で「美談」として受け取るのだが、冷静に考えるとそんなわけがない。

 物価高は従業員にも影響があるのだから、まずは彼らの賃金を上げないといけない。会社として当たり前のことをやったうえで、原料高騰などの中で価格を維持するには何かを犠牲にしなくてはいけないということだ。

 「効率化」とか「コスト削減」というふわっとした言葉でごまかしているが、それは「これまでやっていたことをやめる」ということに他ならない。企業側にも客側にもなんの意味もない無駄なことならばどんどんやめればいいが、現実はそんなことはない。客側は「安さ」と引き換えに、これまで得られていた何かを失っているのだ。

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