サイゼリヤの進化か、改悪か? メニュー削減と2000店舗拡大の裏にある戦略スピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2024年10月09日 05時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

成長する中国市場との違い

 例えば、2021年第1四半期に1097店舗だったものが、2022年同期には1087店舗、2023年同期には1071店舗と減少して、ついに2024年同期には1051まで減っているのだ。

サイゼリヤ国内の出退店推移(出典:同社の第1四半期決算説明資料)

 このように苦戦する国内事業と対照的なのが、中国市場だ。中国のサイゼリヤももちろん「安くてうまい」を武器に成長しているのだが、日本のサイゼリヤと決定的に違うのは「値上げ」をすることだ。

「サイゼリヤは、アジアでは機動的な価格政策を実施している。上海や香港にある各地の法人が、それぞれの地域の経済状況などから価格を決定し、柔軟に値上げを行っている。

サイゼリヤの松谷秀治社長は、『例えば、中国では賃金の上昇が続いている。サイゼリヤは値上げを行っても、「リーズナブルなイタリアン」として認識されていることもあり、客数も伸びている』と話す」(東洋経済オンライン 2023年10月21日)

セグメント別の業績(出典:同社の第1四半期決算説明資料)
アジアの内訳(出典:同社の第1四半期決算説明資料)

 しかし、日本のサイゼリヤは「柔軟な値上げ」をかたくなに拒んでいる。できないのだという人がいるが、外食チェーン各社は普通に値上げをしている。かつて値上げをするとネットやSNSで「庶民切り捨てだ!」「もう行きません」と不買が呼びかけられたマクドナルドはこの2年で5度の値上げをしているが、業績は好調だ。

 こういう他社事例が山ほどある中で、サイゼリヤが値上げに踏み切れないのは「自縄自縛のわな」に陥っている可能性が強い。「安さが強み」だと自分たちでも言ってきた。客にアンケートを取れば「安いから来た」という声が多い。そういうことを繰り返しているうちに「安さ」の奴隷になって、ここを失うことは全てを失ってしまう、という強迫観念にとらわれてしまっているのだ。

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